大分・別府鉄輪朝読書ノ会

大分県別府市鉄輪にて毎月開催しています課題図書形式の読書会です。

【開催案内】第三十回 別府鉄輪朝読書ノ会

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主催者のシミズです。十月の別府鉄輪朝読書ノ会の案内をします。十月は村上春樹アフターダーク』(講談社文庫)を読んでいきたいと思います。ご関心ある方はホームページよりお申込みください。開催日は十月二十八日です。

 

内容紹介

真夜中から空が白むまでのあいだ、どこかでひっそりと深淵が口を開ける。

風の歌を聴け」から25年、さらに新しい小説世界に向かう村上春樹書下ろし長編小説

マリはカウンターに置いてあった店の紙マッチを手に取り、ジャンパーのポケットに入れる。そしてスツールから降りる。溝をトレースするレコード針。気怠く、官能的なエリントンの音楽。真夜中の音楽だ。――(本文より)

 

 

参加のお申込み - 大分・別府鉄輪朝読書ノ会

 

 

2018.10.8 呉、田中小実昌『アメン父』と父種助、そして十字架のない教会

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十字架のない教会はこのホテルの窓から見えるあの山の中腹あたりにあるはず。

 

 旅の最終日。この日は台風の影響も抜け、朝から快晴。日差しが鋭かった。今回の旅の一番の目的はこの読書会でもとりあげた田中小実昌アメン父』に出てくる呉にある十字架のない教会を訪れることだった。読書会の後も熱に浮かされるように『アメン父』は私をとらえていた。散文の形式において神や宗教の問題を考えたいというのがここ数年来自分のテーマとなっていて、『アメン父』はその最上のテクストのひとつだった。ネットでの少ない情報、それも10年以上前の情報を手掛かりに傾斜地を目指して進んだ。

 

 

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公道なのか私道なのかわからなくなってきた。この道で正しいのか確信がもてぬまま進んだ。

 

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進むに連れて道が細くなっていった。

 

 

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折れ曲がった番地札に講談社文芸文庫の巻末年譜にある住所が書かれていて、このあたりだろうと見当をつけることができた。

 

 

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階段をわけも分からぬまま上がると、十字架のない教会についにたどり着いたようだ。私有地なのでこれ以上進めないなと思っていたところ、どこからか人の声がする。奥で草刈りをしている人がいる。この土地の所有者の方らしい。田中小実昌について話すと快く敷地のなかに入れてくれた。まれにこの教会を見に人が来るそうで、前回は北海道からだったらしい。名前を聞くと伊藤さんという。『アメン父』に出てくる父種助氏の後を継いだ伊藤八郎氏の息子さんだと思われる。伊藤八郎氏は田中小実昌の妹ミチの夫でもある。

 

 

 

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アサ会の十字架のない教会。年譜によると1933年に建てられているから築85年にはなる。

 

「一年後にできた教会の建物も、教会堂とはよばなかった。中段と言われていた。山の側面に、ぼくたちがいる家がいちばん下、そして中段、ずっと上の山の尾根にも家があって上段とよんだ。教会堂ではなく、ただの中段なんて、名前がないのとおなじだ。(中略)中段には十字架もなかった。」『アメン父

 

 

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この場所は呉の港湾が一望できた。戦時中は憲兵が来て、港湾の方を見るなと言われたそうだ。見るなと言われると余計見たくなると伊藤さんは語った。

 

 

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(当たり前だけど)建物の位置関係など『アメン父』に書かれてある通りで感動した。右側に見える家は上段から運んで建て直したものらしい。おそらくここで父種助氏は亡くなったのではないか。

 

 

「中段は、ぼくたちが住んでる家からは、直線で二〇メートルぐらいななめ上にあった。中段の建物の片側はぜんぶ窓で、窓の下には雑木がいっぱい見えた。秋から冬にかけてドングリの実ができる木がおものようだった。そんなに大木ではない。みどりもたいして濃くはなかった。木と木のあいだもまばらな隙間があって、あかるく陽がとおっていた。広島県の瀬戸内海にのぞんだ軍港町呉の南にむいた山腹で、あかるい土地だったのではないか。」『アメン父

 

 

「この家は上段にあったときは、広い庭のなかに泉水をうしろにした茶室ふうの家で、まわりをぐるっと縁側がとりまいていた。

下にはこんでからは父の部屋になっていて、父はベッドもこしらえさせた。(中略)

父はこの部屋で昭和三三年(一九五八)三月に死んだ。七三歳だった。そのとき、ぼくはこの部屋にいたのだが、ひととつまらないことをしゃべっていて、父が死んだのを知らなかった。」『アメン父

 

 

 

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信者さんの洗礼に使われたという水場が残っていた。これも作品に書かれていて、現存していることに胸打たれた。

 

「洗礼をうけたのは、ぼくのうちのよこのプールだ。(中略)洗礼をうけたプールは、この部屋から三、四メートルぐらいむこうにあった。長さ三メートル、幅一・五メートルぐらいの小さいプールで、地面からは高く、地面に長方形のコンクリートの箱をおいたようだった。」『アメン父

 

 

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それにしてもものすごい傾斜にへばりつくように建っている。投入堂のようだ。この場所だからこそ開発を免れて残っているのかもしれない。でも十年後もあるのかどうかはわからない。

 

「十字架のない教会の建物はめずらしく、タタミをしいた教会もあまりなく、それが雑木のなかにたってるのも、じつはめずらしいことかもしれないが、十二畳のタタミに六畳はたっぷりある広い廊下がついた建物そのものは、くりかえすが、なんのかざりもない建物だった」『アメン父

 

 

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すぐ近くにお墓があり、ここに種助さんも、小実昌さんも娘さんの作家田中りえさんも眠っているとのこと(凄いお三方!)。しばし手を合わせる。今回は偶然伊藤さんがいたので中に入れて、案内もしていただいた。こんな僥倖はない。ありがとうございました。

 

 

初日に訪れた尾道志賀直哉旧居は、しっかりと公的に維持管理され看板もあり、案内人も常駐している。それに比べてここにはそういった公の庇護はないが、伊藤さんは見に来る人のために草刈りや木の伐採をしている。放置すればあっと言う間に山に埋もれてしまうようだ。両者を比較しても詮無いことだが、体験として生々しさをもち、圧倒されるものがまるで違ったのだった。わたしはなにかのはらわたを覗き込んでしまったようだ。

 

 

「この本は父の伝記でも、ぼくの父へのおもいででもなく、(いまでも)アメンが父をさしつらぬいていることを、なんとか書きたかった。」『アメン父』あとがき

 

 

年譜

※「田中小実昌データ・ベース 年譜」を管理されている方に許可をいただいて、年譜をリンクしています。

 

 

十字架のない教会の余韻を残しながら、帰りの電車の時刻まで時間があったので、呉のまちを散策した。潜水艦をはじめて間近に見た。

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あなご丼は高かったので、妥協してあなごうどんに。美味。

旅は終わる。

 

 

この読書会で『アメン父』をあつかったときの開催報告です。 

kannawadokusho.hatenablog.jp

 

2018.10.7 広島、原民喜『夏の花』を歩いた。

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朝はすずしい風が吹いていた京橋川。川岸から川に降りる階段「雁木」が多くみられた。

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最初に原民喜の眠る円光寺を訪れた。

原民喜が鉄道自殺した3月13日は私の誕生日と同じだった。

 

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甥の文彦さん(七歳)の名前を見つけた。作中にその名前の記憶があった。


「馬車は次兄の一家族と私と妹を乗せて、東照宮下から饒津にぎつへ出た。馬車が白島から泉邸入口の方へ来掛った時のことである。西練兵場寄りの空地に、見憶みおぼえのある、黄色の、半ずぼんの死体を、次兄はちらりと見つけた。そして彼は馬車を降りて行った。嫂も私もつづいて馬車を離れ、そこへ集った。見憶えのあるずぼんに、まぎれもないバンドを締めている。死体はおいの文彦であった。上着は無く、胸のあたりに拳大こぶしだいれものがあり、そこから液体が流れている。真黒くなった顔に、白い歯がかすかに見え、投出した両手の指は固く、内側に握り締め、爪が喰込んでいた。その側に中学生の屍体が一つ、それから又離れたところに、若い女の死体が一つ、いずれも、ある姿勢のまま硬直していた。次兄は文彦の爪をぎ、バンドを形見にとり、名札をつけて、そこを立去った。涙も乾きはてた遭遇であった。」『夏の花』
 
 

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墓碑銘

遠き日の石に刻み

砂に影おち

崩れ堕つ

天地のまなか

一輪の花の幻

 

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原民喜被爆時に避難した東照宮へ。被爆の翌日に一夜を過ごしている。

 

 

「急いで、東照宮の境内へ行ってみた。すると、いま、小さな姪は母親と対面しているところであった。昨日、橋のところで女中とはぐれ、それから後は他所よその人にいて逃げて行ったのであるが、彼女は母親の姿を見ると、急にえられなくなったように泣きだした。その首が火傷やけどで黒く痛そうであった。
 施療所は東照宮の鳥居の下の方に設けられていた。はじめ巡査が一通り原籍年齢などを取調べ、それを記入した紙片をもろうてからも、負傷者達は長い行列を組んだまま炎天の下にまだ一時間位は待たされているのであった。だが、この行列に加われる負傷者ならまだ結構な方かもしれないのだった。今も、「兵隊さん、兵隊さん、助けてよう、兵隊さん」と火のついたように泣喚なきわめく声がする。路傍にたおれて反転する火傷の娘であった。かと思うと、警防団の服装をした男が、火傷で膨脹した頭を石の上によこたえたまま、まっ黒の口をあけて、「誰か私を助けて下さい、ああ看護婦さん、先生」と弱い声できれぎれに訴えているのである。が、誰も顧みてはくれないのであった。巡査も医者も看護婦も、みな他の都市から応援に来たものばかりで、その数も限られていた。」『夏の花』

 

 

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境内は七五三参りや結婚式でにぎわっていた。

 

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幟町の世界平和記念聖堂。このあたりに原民喜の実家があったようだ。

 

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原民喜被爆柳。大きな亀裂があった。

 

 

  ヒロシマのデルタに
  若葉うづまけ
  死と焔の記憶に
  よき祈よ こもれ


  とはのみどりを
  とはのみどりを


  ヒロシマのデルタに
  青葉したたれ
 
 
 
  永遠のみどり 原民喜
 

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路面電車でまちなかへ。

本とうつわのちいさなお店〈READAN DEAT〉。小さいながら書籍や雑貨が充実していて、つい長居してしまった。素敵なお店でした。マンションの一室にひっそりとあります。

 

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郵送できる紙袋のなかに文庫本がはいっていて、その本の一文が書かれています。どんな文庫本が入っているのかとても魅かれます。

 

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原民喜の墓碑銘にもあった詩が刻まれています。

 

 

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こどもの本屋 えほんてなブル

こちらも素敵な児童書専門店でした。袋町公園の前にあります。

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夜は呉の海軍カレーを食べました。

 

原民喜『夏の花』は別府鉄輪朝読書ノ会でとりあげた小説のなかでも最も衝撃を受けた(名前は知っていたし昔読んだけど改めて精読してみると全然違う小説だった!)小説でした。それゆえ広島を訪れた際はぜひともそのゆかりの場所に立ち寄ってみたいと長らく思い今回実現した次第であります。

 

原民喜『夏の花』のレポート。

kannawadokusho.hatenablog.jp

 

 

 

2018.10.6 尾道、志賀直哉旧居

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十月の連休を利用して、尾道、広島、呉と旅してきました。

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わたしのなかの何が琴線に触れさせるのだろうか。

 

 

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志賀直哉旧居、書斎からの尾道水道の景色がすばらしかった。

 

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志賀直哉旧居の案内人のおじさんは饒舌で、いろんなお店を紹介してくれた。なかでも朱華園の中華そばは美味しかった。

 

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夜は広島でお好み焼き。店はどこもカープカラー一色だった。

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尾道から広島まで、車両故障の為三時間近くかかってへとへとになった。ホテルに帰って泥のように眠った。

 

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【開催報告】第二十九回 別府鉄輪朝読書ノ会

こんにちは。主催者のシミズです。10月の別府鉄輪朝読書ノ会を開催しましたので、報告します。当日は朝から台風が接近していましたが、近隣の方など来られる参加者のみでこじんまりと開催しました。全員女性だったのが印象的でした。ありがとうございました。 

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今回とりあげた作品はアントニオ・タブッキ須賀敦子訳の『供述によるとぺレイラは…』でした。舞台となっているリスボンへの思いのある方、訳の良さに注目される方、こうでないといけないという決めつけのない主人公の感覚に共感する方、ハードボイルド小説として読まれた方などさまざまな感想が聞かれました。

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今回はサトウアヤコさんの協力を得て、カードを使った対話を試してみました。特に引用カードと呼ばれる、作中の文章を引用してそれについて語ってもらうという方法は対話を活性化させ、それぞれの関心事、読むポイントの違いをはっきりとさせることができました。f:id:kannawadokusho:20180930222117j:plain

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カード・ダイアローグの手法はまた使ってみたいと思います。カードの提供、ありがとうございました。

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むすびのさん提供の料理は、作品にちなんだレモネードやチーズ入りのオムレツでした。たいへん美味しかったです。ありがとうございました。

 

 

dialogue.mogubook.net

 

カード・ダイアローグのサイトです。ご関心ある方は見てみてください。

 

 

【開催案内】第二十七回別府鉄輪朝読書ノ会

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九月の読書会の案内です。

アントニオ・タブッキの『供述によるとぺレイラは…』(須賀敦子訳)を読んでいきます。リスボンの夏の光を思いながら。むずびのさんの軽食も楽しみです。(表紙の写真がとても好きです。)

 

内容(「BOOK」データベースより)

ファシズムの影が忍びよるポルトガルリスボン小新聞社の中年文芸主任が、ひと組みの若い男女との出会いによって、思いもかけぬ運命の変転に見舞われる。タブッキの最高傑作と言われる小説。

 

 

開催は9月30日日曜日の午前10時より。場所は別府鉄輪ここちカフェむすびのさんです。ご関心のある方はホームページよりお申込みください。

 

kannawanoasa.jimdo.com