対話と人と読書|別府フリースクールうかりゆハウス

別府市鉄輪でフリースクールを運営しています。また「こども哲学の時間」など

【開催案内】第十一回別府鉄輪朝読書ノ会

 

こんにちは。主催者のシミズです。二月の別府鉄輪朝読書ノ会の案内をします。課題図書は田中小実昌の『アメン父』をとりあげたいと思います。一月は遠藤周作の『沈黙』をとりあげたところですが、キリスト教あるいは宗教について、もう一歩踏み込んで考えてみたく、この小説を選びました。舞台は戦前の広島・呉の傾斜地に十字架をもたないインディーズの教会を設立した父の話です。現在ヒット中の映画「この世界の片隅に」の原作でこうの史代氏が巻末に参考資料としてこの本をあげていたのには驚きました。ご興味ある方はホームページよりお申し込みください。

ホーム - 大分・別府鉄輪朝読書ノ会

 

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 “父は肩肘はらないで大マジメだった”明治末にアメリカで久布白直勝牧師により受洗、昭和三年広島・呉市に十字架のない独立教会を創設、七十余で没した父。呉の三津田の山に父が建てた上段・中段と呼ぶ集会所(教会)、住居での懐かしい思い出や父の日記・著作等から“アメン”に貫かれている父の生涯の軌跡を真摯に辿る。息子から父への鎮魂歌。長篇小説。(「BOOK」データベースより)

 

 

【開催報告】第十回 別府鉄輪朝読書ノ会

シベリア寒気団の南下によりここ鉄輪でも降雪となる中でしたが第十回目の別府鉄輪朝読書ノ会を開催しました。今回の課題本は遠藤周作の『沈黙』。第十回目にふさわしい(偶然にも漢数字の「十」がクルスを象って…)作品となりました。

 

はじめにみなさんに全体的な感想を聞いてみました。「一気に読んだ」「以前に読んだときと感想が変わった。自分も変わったことを実感した」「世界文学にたる普遍性がある」「作者自身の葛藤を登場人物を通して表現している」「遠藤周作は変なおじさんのイメージしかなかったが、こんなに凄い小説を書いているなんて」「日本の風土に一神教はなじまないのか」「映画『地獄の黙示録』を思い起こさせる潜入譚」「後半動きがなくなりダレた」「当時の冷戦を背景としているスパイもののようだ」「スニーキング・ミッション」などなど。幼稚園やミッション系の大学や留学、また親御さんとの関係を通してキリスト教との個人史が語られる場面が多々ありました。

 

今回は小説の細部を読み解いていって味わうというよりも、キリスト教の文化や歴史、なぜ殉教するのか、日本での受容のされかた、その変容など作品の外側の知識が語られることが多く、すばらしい描写の多い遠藤周作の文章をもっと純粋に味わいたかった気もしましたが、避けては通れない予備知識でもあったと思うので、そのあたり2時間では厳しかったかもしれません。参加された方が、この作品の裾野の広さにそれぞれ得るものがあればと思いました。

 

私個人としては、最後にロドリゴが踏み絵を踏んで、転ぶことで、逆に世界のなかで個として単独に(カトリックという官僚的に管理された公的な神ではない)神とつながった(見出した)ことが全てだと思うのですが、この屈折した感じはどれくらい理解されて読まれているのかわかりません。来週公開のスコセッシ監督の映画「沈黙」でどこまでこのあたりが描写されるのか、期待したいと思います。

 

 

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ポルトガルつながりということで、ポルトガルではメジャーだというライス・プリンと遠藤周作の出演していたCM「違いが分かる男、ゴールドブレンド」のブラック・コーヒーが提供されました。人生初のライス・プリン。かなり甘かったのですが、苦めのコーヒーで中和されて美味しくいただきました。

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そして長崎といえば、ちゃんぽん!!イカシュウマイ入り!玄米おむすびは揚げ玉(狐狸庵先生より)入りでサクサクして美味しかったです。

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むすびのの田中さんに今日の軽食のコンセプトについてご説明いただきました。ちゃんぽんの麵が品切れで探すのが大変だったそうです。どれも美味しくいただきました。ありがとうございました。

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最後に集合写真をパチリ。みなさま、どうもありがとうございました。次回はキリスト教つながりで田中小実昌の『アメン父』をとりあげます。(記:志水)

【開催案内】第十回別府鉄輪朝読書ノ会

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新年あけましておめでとうございます。年末年始、別府鉄輪温泉は県外からの観光客が増えてにぎやかになっています。鉄輪温泉は湯が熱めなので、浸かる前にしっかり湯かけして入りましょう。そうしないとかなり湯疲れしますよー。

 

さて今年最初の別府鉄輪朝読書ノ会はマーティン・スコセッシによる映画化もされて公開が待ち遠しい、遠藤周作の『沈黙』です。

 

内容(「BOOK」データベースより)

キリシタン迫害史を背景とする緊迫のドラマの中に、神の存在を問い、信仰の根源を衝いて、西洋と日本の思想的対立を鋭くえぐり出す長編小説。谷崎潤一郎賞、ピエトロザク賞受賞。 --このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。

 

 

1月15日(日)10時より。別府鉄輪ここちカフェむすびのさんにて開催します。

作品にインスピレーションを受けた、むすびのさんの軽食メニューも楽しみです。

本年もよろしくお願いいたします。

 

 

【開催報告】第九回 別府鉄輪朝読書ノ会

年内最後となる別府鉄輪朝読書ノ会を開催しました。今回の課題本は多和田葉子さんの新訳によるフランツ・カフカの『変身(かわりみ)』をとりあげました。

 

会のはじめにこの作品の全体的な感想を聞いてみました。「グレゴールはおれのこと」「今ではグレゴールの気持ちがわかる」「ちんぷんかんぷん」「救いがない」「この訳は読みやすかった」「これが世界文学なのか」「主人公が虫に変身するだけでなく、家族全体が変わっていく物語」

 

主人公が穢れた虫に突然変わってしまうという物語に度肝を抜かれながらもその寓話が導く、ディスコミュニケーションや引きこもり、疎外感や孤独感など現代社会を通して読むことができる普遍性がこの作品には内在しているという話。また恋人や妻のいないグレゴールに対して「妹萌え」や「二次元コンプレックス」の指摘があり、ここにも時代を超越してしまったかのようなカフカの創造性、才能にあらためて気づかされました。

 

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むすびの店主 河野さんから、ウルトラマンに出てくる怪物ジャミラ(元は人間で後から怪獣になる)の悲しいエピソードと今回の作品を絡めて語っていただきました。

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今回のむすびのさんからの軽食メニューは、もともと洋のものであるラザニアを和風に〈変化〉させたもので、里芋のクリームソースをベースに牛すじ肉がはいっていました。美味しくいただきました。ありがとうございました。

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最後にみなさんで記念撮影。ご参加ありがとうございました。

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来年1月の回は遠藤周作の『沈黙』を課題本とします。

来年もよろしくお願いします。

【課題本の紹介】カフカ『変身(かわりみ)』

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内容(「BOOK」データベースより)

カフカの文学は、映像的であるという印象を与えながらも一つの映像に還元できないところに特色がある。『変身』のグレゴール・ザムザの姿も言語だけに可能なやり方で映像的なのであって、映像が先にあってそれを言語で説明しているわけではない。…読む度に違った映像が現れては消え、それが人によってそれぞれ違うところが面白いのである。この機会にぜひ新訳でカフカを再読して、頭の中の映画館を楽しんでほしい。

著者について

カフカ,フランツ
1883.7.3‐1924.6.3。ユダヤ系のドイツ語作家。オーストリア=ハンガリー帝国の領邦ボヘミア王国(現在のチェコ)の首都プラハに生まれる。民間保険会社、のち労働者災害保険局に勤務の傍ら、小説を発表。生前の読者は限られていたが、第二次世界大戦後の実存主義ブーム中に再発見され、世界的名声を得る。

多和田葉子(たわだ・ようこ)
小説家・詩人。早稲田大学第一文学部ロシア文学科卒、ハンブルグ大学大学院修士課程修了、チューリッヒ大学博士課程修了。大学卒業後の1982年よりドイ ツ・ハンブルグに移住、日本語、ドイツ語で詩作、小説創作。主な作品に「かかとを 失くして」(群像新人文学賞)、「犬婿入り」(芥川賞)、『ヒナギクのお茶の場合』(泉鏡花文学賞)、『容疑者の夜行列車』(伊藤整文学賞谷崎潤一郎 賞)、『雪の練習生』(野間文芸賞)、『雲をつかむ話』(読売文学賞芸術選奨文部科学大臣賞)、『献灯使』、『言葉と歩く日記』など。

 

12月18日に開催予定の別府鉄輪朝読書ノ会の課題本は、

F・カフカの『変身(かわりみ)』をとりあげます。

カフカの『変身』は多くの優れた翻訳がありますが、

今回は多和田葉子さんの訳された集英社文庫ヘリテージシリーズを

みなさんと読んでいきたいと思います。

 

ご関心のある方は、ホームページよりお申込みください。

参加のお申込み - 大分・別府鉄輪朝読書ノ会

 

【開催報告】第八回 別府鉄輪朝読書ノ会

朝からはげしい雷雨が続いていましたが、

無事に第八回目の別府鉄輪朝読書ノ会を開催できました。

今回は土曜日の朝9時半からの変則的な時間帯でしたが、

6名の方に参加していただき、対話をしました。

 

今回とりあげた作品は大江健三郎氏が20代の終わりに書いた『個人的な体験』。

大江文学は難しい印象があった、食わず嫌いで敬遠していたが読んでみたら、

意外にエンターテインメントだった、先入観が変わったという声が聞かれました。

 

この作品は、主人公の鳥(バード)に生まれた子供に障害があることが判明し、

その子供を葬りたいと考えるなかで主人公が逡巡、苦悩し、

最終的には育てることを決意するまでの経過を描いた作品で、

七月にあった相模原での障害者を殺傷する事件が起きたのは、

文学、物語の力が及ばなかったからではないのかという話がされました。

この作品にはまるまる主人公の〈ためらい〉や〈踏み止まり〉が描かれており、

相模原の事件にはそれがないと。

 

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今日はむすびのさんを貸し切って1階で開催しました。

初冬の光が射し込んでいました。

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むすびのさんより、大江健三郎氏がノーベル文学賞を受賞した1994年当時に

流行した、パンナコッタと杏のジャムを水に溶かしたドリンクが提供されました。

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むすびのの田中さんよりメニューの説明。軽食は大江氏がフランス文学に精通しているということで、フランス料理であるグラタンでした。グラタンには、〈焦がす〉〈こそげとる〉という意味合いもあるようで、作品世界にも通じるのではというお話でした。ボリュームもあって、美味しかったです。

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夜の鉄輪地区はいろんなところで竹灯籠が楽しめました。

温泉からあがったら、道端カレンさんが立っていてびっくりしました。

別府のおすすめスポットを案内していたようですね。

 

www.gokuraku-jigoku-beppu.com

 

次回12月、年内最後の読書会はカフカの『変身(かわりみ)』をとりあげます。 

 

【課題本の紹介】『個人的な体験』大江健三郎

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内容(「BOOK」データベースより)

わが子が頭部に異常をそなえて生れてきたと知らされて、アフリカへの冒険旅行を夢みていた鳥は、深甚な恐怖感に囚われた。嬰児の死を願って火見子と性の逸楽に耽ける背徳と絶望の日々…。狂気の淵に瀕した現代人に、再生の希望はあるのか?暗澹たる地獄廻りの果てに自らの運命を引き受けるに至った青年の魂の遍歴を描破して、大江文学の新展開を告知した記念碑的な書下ろし長編。

 

11月は大江健三郎の『個人的な体験』(新潮文庫)をとりあげます。

相模原の障害者施設での殺傷事件を受けてから、

この作品を読み直したいと思いました。

ご関心のある方は、ホームページよりお申込みください。

 参加のお申込み - 大分・別府鉄輪朝読書ノ会