対話と人と読書|別府フリースクールうかりゆハウス

別府市鉄輪でフリースクールを運営しています。また「こども哲学の時間」など

【開催案内】第十二回 別府鉄輪朝読書ノ会

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12年前に夫の礼は失踪した、「真鶴」という言葉を日記に残して。京は、母親、一人娘の百と三人で暮らしを営む。不在の夫に思いをはせつつ新しい恋人と逢瀬を重ねている京は何かに惹かれるように、東京と真鶴の間を往還するのだった。京についてくる目に見えない女は何を伝えようとしているのか。遙かな視線の物語。 (「BOOK」データベースより)

 

川上弘美
1958(昭和33)年、東京都生まれ。お茶の水女子大学理学部卒業。94年、「神様」で第1回パスカル短篇文学新人賞を受賞。96年、「蛇を踏む」で第115回芥川賞を受賞。99年、『神様』でBunkamuraドゥマゴ文学賞紫式部文学賞、2000年、『溺レる』で伊藤整文学賞、女流文学賞、01年、『センセイの鞄』で谷崎潤一郎賞、07年、『真鶴』で芸術選奨文部科学大臣賞を受賞(著者略歴)

 

 

主催者のシミズです。

第十二回の別府鉄輪朝読書ノ会の案内をします。

3月26日(日)午前10時よりここちカフェむすびのさんにて開催します。

今回の課題図書は川上弘美さんの『真鶴』(文春文庫)です。

冒頭は「歩いていると、ついてくるものがあった。」で始まります。

文字組の美しい表紙です。

ご興味ありましたら、ホームページよりお申込みください。

 

ホーム - 大分・別府鉄輪朝読書ノ会

 

 

 

 

別府大学~文学への誘い 特別講演「温泉と文学」

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先日、別府大学で開催された特別講演「温泉と文学」にいってきました。以前、この読書会にも参加していただいた澤西祐典さんをコーディネーターに、芥川賞作家の藤野可織さん、吉村萬壱さん、玄月さんの三氏が、温泉地で読みたい本などを語る楽しい会でした。特に三氏が別府について語る言葉が興味深く、改めて別府の底知れぬ魅力を他者の言葉によって知るのでした。

 

藤野さんの紹介した本のなかに、刑務所のなかで開催される読書会の様子を描いた『プリズン・ブック・クラブ』ウォームズリー(紀伊國屋書店)というのがあり、読書会が囚人に与える影響や更生について語られ、そのなかで澤西さんが鉄輪朝読書ノ会について、少し言及していただいたのは嬉しかったです。

 

会場は人に溢れ、大盛況でした。地方に最前線の作家を呼んでいただいて執筆の実際について話が聴ける機会はほとんどないので、貴重な時間をすごせました。関係者のみなさまお疲れ様でした。「読書会の存在が作家にとって励みになる」という言葉もまた私にとって励みになるものでした。ありがとうございました。

 

 

【開催報告】第十一回 別府鉄輪朝読書ノ会

 

こんにちは。別府鉄輪朝読書ノ会主催のシミズです。先日、第十一回目の開催をしました。課題図書は田中小実昌の『アメン父』という入手しがたい作品だったにも関わらず、多くの方に参加いただいて嬉しかったです。ありがとうございました。

 

自己紹介を兼ねつつはじめに全体的な感想を聴いていきました。「書く人も書かれた人も普通じゃない」「以前から蔵書として持っていたが未読だったので、今回の参加を機に読んでみた」「脈絡がない」「ひらがなの多用。これ必要なの?という文章が多かった」「章立てがない。他の方がどう読んだのか知りたい」「初めて知った作家」「明治期の宗教家の人生に興味があった」「再読してみて自分の思考形式の原点になっていることに気付いた」などなど。

 

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本文中にたびたび出てくる「宗教はココロの問題ではない」という一文をめぐって、さまざまな意見や問いが交わされました。宗教において心のよりどころとは違う関わり方とはなんでしょう。簡単には答えられない問いだからこそ、安易な理解、わかったつもりを避け、断定や定義づけ、ラベリング整理や分類を拒んだ思考、その文体がうねるように展開されていく『アメン父』。伝記ではない、物語化に抵抗しつつ描かれる父にすっきりした美しい文章にはない迫力を感じたのではないでしょうか。

 

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むすびのさんから提供されたメニューは呉や海軍に着想を得た、玄米の甘酒、鳥皮出汁のお味噌汁、ふかふかの生地に肉じゃがの入ったパンでした!美味しくいただきました。

 

今回はイメージ(写真)による安易な理解への拒絶を示した作者に敬意を払って写真掲載は最小限にしています。宗教については普段はあまり表立って話すことがないので、今回はいい機会になりました。対話中に出た〈愛を超える理論〉とはなにかという問いが個人的に宿題となりました。みなさん、よい時間をありがとうございました。

 

次回3月は川上弘美さんの『真鶴』をとりあげます。

 

 

 

 

【開催案内】第十一回別府鉄輪朝読書ノ会

 

こんにちは。主催者のシミズです。二月の別府鉄輪朝読書ノ会の案内をします。課題図書は田中小実昌の『アメン父』をとりあげたいと思います。一月は遠藤周作の『沈黙』をとりあげたところですが、キリスト教あるいは宗教について、もう一歩踏み込んで考えてみたく、この小説を選びました。舞台は戦前の広島・呉の傾斜地に十字架をもたないインディーズの教会を設立した父の話です。現在ヒット中の映画「この世界の片隅に」の原作でこうの史代氏が巻末に参考資料としてこの本をあげていたのには驚きました。ご興味ある方はホームページよりお申し込みください。

ホーム - 大分・別府鉄輪朝読書ノ会

 

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 “父は肩肘はらないで大マジメだった”明治末にアメリカで久布白直勝牧師により受洗、昭和三年広島・呉市に十字架のない独立教会を創設、七十余で没した父。呉の三津田の山に父が建てた上段・中段と呼ぶ集会所(教会)、住居での懐かしい思い出や父の日記・著作等から“アメン”に貫かれている父の生涯の軌跡を真摯に辿る。息子から父への鎮魂歌。長篇小説。(「BOOK」データベースより)

 

 

【開催報告】第十回 別府鉄輪朝読書ノ会

シベリア寒気団の南下によりここ鉄輪でも降雪となる中でしたが第十回目の別府鉄輪朝読書ノ会を開催しました。今回の課題本は遠藤周作の『沈黙』。第十回目にふさわしい(偶然にも漢数字の「十」がクルスを象って…)作品となりました。

 

はじめにみなさんに全体的な感想を聞いてみました。「一気に読んだ」「以前に読んだときと感想が変わった。自分も変わったことを実感した」「世界文学にたる普遍性がある」「作者自身の葛藤を登場人物を通して表現している」「遠藤周作は変なおじさんのイメージしかなかったが、こんなに凄い小説を書いているなんて」「日本の風土に一神教はなじまないのか」「映画『地獄の黙示録』を思い起こさせる潜入譚」「後半動きがなくなりダレた」「当時の冷戦を背景としているスパイもののようだ」「スニーキング・ミッション」などなど。幼稚園やミッション系の大学や留学、また親御さんとの関係を通してキリスト教との個人史が語られる場面が多々ありました。

 

今回は小説の細部を読み解いていって味わうというよりも、キリスト教の文化や歴史、なぜ殉教するのか、日本での受容のされかた、その変容など作品の外側の知識が語られることが多く、すばらしい描写の多い遠藤周作の文章をもっと純粋に味わいたかった気もしましたが、避けては通れない予備知識でもあったと思うので、そのあたり2時間では厳しかったかもしれません。参加された方が、この作品の裾野の広さにそれぞれ得るものがあればと思いました。

 

私個人としては、最後にロドリゴが踏み絵を踏んで、転ぶことで、逆に世界のなかで個として単独に(カトリックという官僚的に管理された公的な神ではない)神とつながった(見出した)ことが全てだと思うのですが、この屈折した感じはどれくらい理解されて読まれているのかわかりません。来週公開のスコセッシ監督の映画「沈黙」でどこまでこのあたりが描写されるのか、期待したいと思います。

 

 

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ポルトガルつながりということで、ポルトガルではメジャーだというライス・プリンと遠藤周作の出演していたCM「違いが分かる男、ゴールドブレンド」のブラック・コーヒーが提供されました。人生初のライス・プリン。かなり甘かったのですが、苦めのコーヒーで中和されて美味しくいただきました。

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そして長崎といえば、ちゃんぽん!!イカシュウマイ入り!玄米おむすびは揚げ玉(狐狸庵先生より)入りでサクサクして美味しかったです。

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むすびのの田中さんに今日の軽食のコンセプトについてご説明いただきました。ちゃんぽんの麵が品切れで探すのが大変だったそうです。どれも美味しくいただきました。ありがとうございました。

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最後に集合写真をパチリ。みなさま、どうもありがとうございました。次回はキリスト教つながりで田中小実昌の『アメン父』をとりあげます。(記:志水)

【開催案内】第十回別府鉄輪朝読書ノ会

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新年あけましておめでとうございます。年末年始、別府鉄輪温泉は県外からの観光客が増えてにぎやかになっています。鉄輪温泉は湯が熱めなので、浸かる前にしっかり湯かけして入りましょう。そうしないとかなり湯疲れしますよー。

 

さて今年最初の別府鉄輪朝読書ノ会はマーティン・スコセッシによる映画化もされて公開が待ち遠しい、遠藤周作の『沈黙』です。

 

内容(「BOOK」データベースより)

キリシタン迫害史を背景とする緊迫のドラマの中に、神の存在を問い、信仰の根源を衝いて、西洋と日本の思想的対立を鋭くえぐり出す長編小説。谷崎潤一郎賞、ピエトロザク賞受賞。 --このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。

 

 

1月15日(日)10時より。別府鉄輪ここちカフェむすびのさんにて開催します。

作品にインスピレーションを受けた、むすびのさんの軽食メニューも楽しみです。

本年もよろしくお願いいたします。

 

 

【開催報告】第九回 別府鉄輪朝読書ノ会

年内最後となる別府鉄輪朝読書ノ会を開催しました。今回の課題本は多和田葉子さんの新訳によるフランツ・カフカの『変身(かわりみ)』をとりあげました。

 

会のはじめにこの作品の全体的な感想を聞いてみました。「グレゴールはおれのこと」「今ではグレゴールの気持ちがわかる」「ちんぷんかんぷん」「救いがない」「この訳は読みやすかった」「これが世界文学なのか」「主人公が虫に変身するだけでなく、家族全体が変わっていく物語」

 

主人公が穢れた虫に突然変わってしまうという物語に度肝を抜かれながらもその寓話が導く、ディスコミュニケーションや引きこもり、疎外感や孤独感など現代社会を通して読むことができる普遍性がこの作品には内在しているという話。また恋人や妻のいないグレゴールに対して「妹萌え」や「二次元コンプレックス」の指摘があり、ここにも時代を超越してしまったかのようなカフカの創造性、才能にあらためて気づかされました。

 

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むすびの店主 河野さんから、ウルトラマンに出てくる怪物ジャミラ(元は人間で後から怪獣になる)の悲しいエピソードと今回の作品を絡めて語っていただきました。

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今回のむすびのさんからの軽食メニューは、もともと洋のものであるラザニアを和風に〈変化〉させたもので、里芋のクリームソースをベースに牛すじ肉がはいっていました。美味しくいただきました。ありがとうございました。

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最後にみなさんで記念撮影。ご参加ありがとうございました。

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来年1月の回は遠藤周作の『沈黙』を課題本とします。

来年もよろしくお願いします。