大分・別府鉄輪朝読書ノ会

大分県別府市鉄輪にて毎月開催しています課題図書形式の読書会です。

無題

 

一冊を通して読んでも何の感動も与えなかった書物が、ある頁をふと眺めていて強烈なインスピレーションを与える事がある。この事実は、読書という営みの本質を教えている。我々の生を照らし出す言葉との出会いは、意図して得れるものではなく、我々の思いを超えて与えられる根源的に受動的な恩寵なのだ

 

独創的な発想が訪れるのは、独創的な発想をしてやろうとしてる人に対してではなく、事柄の真相を丁寧に探求してる人に対してだ。同じように一冊の書物に対する独創的な読解が生まれてくるのは、独創的な仕方で読んでやろうとしてる人に対してではなく、地道で丁寧な読解を積み重ねる読者に対してなのだ。

 

一冊の本を二回目に読んで、以前は分からなかったことが分かるようになるのは大きな収穫だが、分かっていたつもりのことが実は分かっていなかったことに気づくのはもっと大きな収穫だ。その本についてのみではなく、自分が持っている世界認識の体系の全体を批判的に捉え返す機会を与えてくれるからだ。

 

書物を真に深く理解するために必要なのは「待つ」ことだ。著者の言葉が心の隅々にまで染み渡り、自分の心の中で生きた言葉として動き始めて思索を活性化してくれるまで待たなければならない。だからこそ、すぐに理解しきれないとしても、力を持った書物の言葉を心の中に植え付けておく必要があるのだ。

 

 

山本芳久(比較神学者

山本芳久 (@201yos1) | Twitter