大分・別府鉄輪朝読書ノ会

大分県別府市鉄輪にて毎月開催しています課題図書形式の読書会です。

2018.10.7 広島、原民喜『夏の花』を歩いた。

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朝はすずしい風が吹いていた京橋川。川岸から川に降りる階段「雁木」が多くみられた。

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最初に原民喜の眠る円光寺を訪れた。

原民喜が鉄道自殺した3月13日は私の誕生日と同じだった。

 

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甥の文彦さん(七歳)の名前を見つけた。作中にその名前の記憶があった。


「馬車は次兄の一家族と私と妹を乗せて、東照宮下から饒津にぎつへ出た。馬車が白島から泉邸入口の方へ来掛った時のことである。西練兵場寄りの空地に、見憶みおぼえのある、黄色の、半ずぼんの死体を、次兄はちらりと見つけた。そして彼は馬車を降りて行った。嫂も私もつづいて馬車を離れ、そこへ集った。見憶えのあるずぼんに、まぎれもないバンドを締めている。死体はおいの文彦であった。上着は無く、胸のあたりに拳大こぶしだいれものがあり、そこから液体が流れている。真黒くなった顔に、白い歯がかすかに見え、投出した両手の指は固く、内側に握り締め、爪が喰込んでいた。その側に中学生の屍体が一つ、それから又離れたところに、若い女の死体が一つ、いずれも、ある姿勢のまま硬直していた。次兄は文彦の爪をぎ、バンドを形見にとり、名札をつけて、そこを立去った。涙も乾きはてた遭遇であった。」『夏の花』
 
 

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墓碑銘

遠き日の石に刻み

砂に影おち

崩れ堕つ

天地のまなか

一輪の花の幻

 

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原民喜被爆時に避難した東照宮へ。被爆の翌日に一夜を過ごしている。

 

 

「急いで、東照宮の境内へ行ってみた。すると、いま、小さな姪は母親と対面しているところであった。昨日、橋のところで女中とはぐれ、それから後は他所よその人にいて逃げて行ったのであるが、彼女は母親の姿を見ると、急にえられなくなったように泣きだした。その首が火傷やけどで黒く痛そうであった。
 施療所は東照宮の鳥居の下の方に設けられていた。はじめ巡査が一通り原籍年齢などを取調べ、それを記入した紙片をもろうてからも、負傷者達は長い行列を組んだまま炎天の下にまだ一時間位は待たされているのであった。だが、この行列に加われる負傷者ならまだ結構な方かもしれないのだった。今も、「兵隊さん、兵隊さん、助けてよう、兵隊さん」と火のついたように泣喚なきわめく声がする。路傍にたおれて反転する火傷の娘であった。かと思うと、警防団の服装をした男が、火傷で膨脹した頭を石の上によこたえたまま、まっ黒の口をあけて、「誰か私を助けて下さい、ああ看護婦さん、先生」と弱い声できれぎれに訴えているのである。が、誰も顧みてはくれないのであった。巡査も医者も看護婦も、みな他の都市から応援に来たものばかりで、その数も限られていた。」『夏の花』

 

 

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境内は七五三参りや結婚式でにぎわっていた。

 

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幟町の世界平和記念聖堂。このあたりに原民喜の実家があったようだ。

 

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原民喜被爆柳。大きな亀裂があった。

 

 

  ヒロシマのデルタに
  若葉うづまけ
  死と焔の記憶に
  よき祈よ こもれ


  とはのみどりを
  とはのみどりを


  ヒロシマのデルタに
  青葉したたれ
 
 
 
  永遠のみどり 原民喜
 

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路面電車でまちなかへ。

本とうつわのちいさなお店〈READAN DEAT〉。小さいながら書籍や雑貨が充実していて、つい長居してしまった。素敵なお店でした。マンションの一室にひっそりとあります。

 

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郵送できる紙袋のなかに文庫本がはいっていて、その本の一文が書かれています。どんな文庫本が入っているのかとても魅かれます。

 

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原民喜の墓碑銘にもあった詩が刻まれています。

 

 

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こどもの本屋 えほんてなブル

こちらも素敵な児童書専門店でした。袋町公園の前にあります。

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夜は呉の海軍カレーを食べました。

 

原民喜『夏の花』は別府鉄輪朝読書ノ会でとりあげた小説のなかでも最も衝撃を受けた(名前は知っていたし昔読んだけど改めて精読してみると全然違う小説だった!)小説でした。それゆえ広島を訪れた際はぜひともそのゆかりの場所に立ち寄ってみたいと長らく思い今回実現した次第であります。

 

原民喜『夏の花』のレポート。

kannawadokusho.hatenablog.jp