鉄輪はフォトジェニックな場所が多く、
みなさん発表が終わった後は解放されたのか、写真をたくさん撮っていました。
最後の発表者です。
1時間20分くらいの哲学ウォークでした。
全員の発表が終わり、
スタート地点のここちカフェむすびのに戻りました。
みんなでドリンクを注文し、しばしクーラーの効いた部屋で涼みました。
イチジクの果肉がごろっと入った炭酸ジュースを飲みながら、
今回の哲学ウォークの振り返りをしました。
みなさん、わりと普段から歩いてらっしゃる方が多いようで、
起伏の多い鉄輪の町が歩いてきつかったという感想はなかったです。
みなさんの引いた哲学者の言葉です。
歩いて持っていても、汗などでぼそぼそにならないよう
厚めの紙にプリントアウトしました。
Oさんの引いた言葉。
人間には、必要なもののためより不必要なもののために努力し、
働こうとする気持ちが強い。
Oさんは蔦の絡まる廃墟の館と出会い、
「無常」というコンセンプトを抽出しました。
人間には必要とされる建築物を嘲笑うかのように絡まる蔦やシダ植物を見て、
思いついたようです。不必要な廃墟に美しさを感じたりする人間の側面を
言い当てているようでした。
Mさんの引いた言葉。
怪物と闘うものは、その過程で自らが怪物とならぬように
用心しなければならない。
深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ。
Mさんは怪物と鉄輪の地獄を結び付けつつ、癒しのマッサージ店が
隣にあったことから、「超越」というコンセプトを考えました。
Mさんの引いた言葉。
語り得ぬものについては、沈黙しなければならない。
ヴィットゲンシュタイン
Mさんは今は封鎖され、隠された温泉源跡を眺めながら、
もはや語り得ないものについて思いを馳せ、
「抑制」というコンセプトを考えたようです。
Iさんの引いた言葉。
愛は能動的な活動であり、受動的な感情ではない。
そのなかに”落ちる”ものではなく、”みずから踏み込む”ものである。
エーリッヒ・フロム
前述したようにIさんは谷の湯の落ちていく半地下の入り口を見て、
その温泉を享受するにあたり、踏込むことが重要だと考え、
それが「幸せ」につながるというコンセプトを生みだしました。
Yさんの引いた言葉。
貴重なものが傷つきやすいのは美しい。
傷つきやすさは存在の微(しるし)だから。
腐食し錆びついた温泉の配管を見て、「傷つく」というコンセプトを考えました。
温泉の通る配管は定期的に交換しないと使えなくなりますが、
その傷つきやすさこそが温泉の存在を知らしめるものであり、
また腐食した姿も美しい風景となっているとの見方でした。
今回、みなさんの考えられたコンセプトは、
「傷つく・超越・幸せ・無常・抑制」
この集まったコンセプトからストーリーを作り上げ、
鉄輪の町を描写することもできるでしょう。
そのワークをやって、哲学ウォークの終わりとする場合もあるようですが、
タイムオーバーとなり、今回はそこまでできなかったです。
こうして振り返ってみると、狙い澄ましたわけではないのに、
選んだ哲学者の言葉と鉄輪の風景がからみあい、
コンセプトがうまく生み出されていくことに驚きを隠せません。
歩くことが創造性につながっているという見方もできるでしょう。
あと本音を言えば、僕も案内人ではなく、
一参加者として、考えながら歩いて発表したかったですね。
哲学カフェのような「結論を出さない」という方向性とは異なりますが、
哲学ウォークをうまく方法化すれば、小説を書いたり映画を作ったりといったときの
アイデアやテーマ出しとしても、活用できるかもしれません。
「哲学ウォーク@鉄輪温泉」の開催報告は以上です。
今回はオダサンに撮影協力してもらいました。
みなさん、ご参加いただきありがとうございました。
今回の反省点を踏まえつつ、
また別のロケーションを探して開催したいと思います。
お楽しみに。