対話と人と読書|別府フリースクールうかりゆハウス

別府市鉄輪でフリースクールを運営しています。また「こども哲学の時間」など

【開催報告】第七十九回 別府鉄輪朝読書ノ会 12.18

 

 

 

吾平は寝る時も枕元に算盤を置いた。ふと、商算がうかべば、人の寝しずまった深夜にも、まだ空が白まない夜明け方にもむっくり起き上がり、寝床の上に几帳面に端坐して、一心に算盤をはじいた。油垢に黒く光った算盤の上を、節くれだった太い指先が、飽くことなく動いた。

 

『暖簾』山崎豊子

 

 

 

12月、今年最後の別府鉄輪朝読書ノ会。

外はなんと雪が降っていました。

雪のなかでしたが、多くの方に参加していただきました。

ありがとうございました。

 

 

今回とりあげた作品は山崎豊子『暖簾』。

明治、大正、昭和と激動の時代を生き抜いた大阪船場の昆布商人の話です。

 

参加者のなかに大阪の方がいて、船場の大まかな話をしていただきながら、

作品世界のなかに入っていきました。

 

今回は具に見ていくよりも、山崎豊子の愛した大阪、船場の空気そのものを

同じ目線で味わっていくというような読書会でした。

大阪商人も大阪の文化もやっぱりいいなあと改めて感じながら、

また大阪を題材とした作品を選んでいきたいと思います。       

 

 

 

 

むすびのさんからの特製メニューは、

船場汁(鯖と大根)と小田巻き蒸しという茶碗蒸しのなかに

うどんが入ったものでした。たいへん美味しかったです。

 

 

今年の読書会もこれで終わりです。

今年一年ありがとうございました。

本や人とのいろんな出会いがありました。

来年も唸らせるような小説を選んでいきたいと思います。

よろしくお願いします。

 

 

 

鳥を探しに

 

 

 

 

 

 

私がベンヤミンに惹かれる理由のひとつは、そこかもしれません。彼は、最初から断片として構想された形式は、人類の最後の日における美しきものの像を確保している、というのです。

 

『鳥を探しに』平出隆

 

 

 

2022.12.5-11

月曜日

クロアチア戦、敗北、残念。

でも以前とは全く質の違う日本代表が見られた。

それでもまだあと一歩とは!

 

 

火曜日

サッカーW杯。ブラジルと韓国の試合。

ブラジルの強さは別種の競技、教義を見ているかのようだ。

 

 

水曜日

一日に二度温泉に入る至福を味わう。朝と夜と。

 

 

 

木曜日

サッカーの熱狂への影で、防衛費(軍事費)の増額とそれに伴う増税のニュース。

少子化して国力が落ちていくなかで、ここに注力していく絶望を感じる。

 

さびしさ、国全体のさびしさ

 

 

金曜日

髪を切る。

年内にさっぱりして新年を迎えたいという思いが多くのひとにあって、

これから混み混みになるようだ。

 

 

窓をあけたら、流れ星が奥の方へと流れていくのが見えた。

なんとか流星群のときは一つも見れないのに。

 

 

深夜起きて、ブラジル、クロアチア戦。

たとえば、関ヶ原のときの島津軍のように、文脈から外れた「強さ」というのがあり、

相手の「強さ」を無力化してしまうような、そんな同競技内なのに異種格闘技戦

成り得る余白がサッカーにはあるのかもしれない。

 

 

土曜日

 

 

夜なにげにサカナクションのオンラインライブを聴いたら、いたく感動した。

 

悲しさ、を晴れ晴れしく歌うこと。

 

 

 

探してた 答えはない 

此処には 多分ないな

だけで僕は 敢えて歌うんだ

わかるだろう?

 

「グッドバイ」サカナクション

 

 

 

日曜日

 

十時間以上も眠る

何度も夢を生き直す

何十時間も眠ったかと思えば、

数時間しか眠っていなくて

眠りに眠りを継いで

こうあり得た生を生きた

 

 

 

セルゲイ・ミロンコビッチ・サビッチ

 

 

 

 

 

人間の幸福というものの幻のような、おとぎばなしのような性質が彼には興味深かった。

『幸福』チェーホフ

 

 

 

 

2022.11.28-12.4

月曜日

みんなでみかん狩りヘ。

農園は丘陵の上にあり、目線の彼方には海が見える。

潮風を浴び、農薬を使っていない、露地栽培。

味の酸っぱさがすばらしい。

今スーパーで売られているのは甘すぎて、人間に寄せすぎているように思えた。

 

 

火曜日

11月も終わろうというのに、夏を思い起こさせるような暑さ。

久しぶりに半袖で過ごした。

こどもたちは半パン半袖。

 

 

みんなでラッピング講座。

風呂敷での包み方を習った。

よくできました。

 

 

水曜日

気温が急激に下がる。

 

 

木曜日

鶴見岳の頂きがうっすら白くなった。

昨日以上に寒い。

温泉が素晴らしく感じる。冬は芯まで温まって、本当に有り難く感じる。

なぜみんな温泉地に住まないのか不思議に思うくらいで。

東京に住んでいたころから、いつか温泉のある生活がしたいと思っていて、

そういう願いがなにかを方向付けるのか、いつの間に温泉地に住み、

そしてそこで仕事を得ることができたのだった。

 

 

金曜日

早朝に起きて、サッカー日本代表スペイン戦を観戦する。

勝利の歴史的瞬間に立ち会う。

ドイツやスペインには勝って、コスタリカに負けたというのは、

相手の隙を狙うスタイルでは勝機が生まれやすいが、

自分から創造的に仕掛けないといけない場合は弱いということなのか。

次戦はおそらくスペインやドイツほど強くないクロアチアで、

どう試合展開するのか、楽しみだ。

 

 

曙光をながめながら、朝を迎えた。

 

 

勝った首位通過した興奮そのままに映画を見に行く。

コゴナダ監督の「アフター・ヤン」をシネマ5bisへ。

揺蕩う線香の煙を眺めるごとく、ゆっくりとした時間と空間のなかにいた。

SFというくくりの中で東アジア的な固有な時空間を体験した。

 



土曜日

オフにする。

本を読む。

好きな本を読むからオフになる、というのが正しい。

 

 

教科書販売をしている書店に行って、いろいろ質問をなげかけると

すこぶる愛想が悪く、不愉快な気分になった。

教科書の一般販売というのは、どうも利益が少ないらしく、、

 

ブルーレイがいっぱいになりそうなので、ディスクに書き写す。

 

 

日曜日

午前中に対話勉強会。

今後の方針など語り合う。

意見がばらばら同士の者より、

同じ志を持つ者ほど、一緒にやっていくのは難しい。

わずかな差異がおおきな隔たりのように感じてしまうのだった。

 

 

 

すべて成熟は早すぎるよりも遅すぎる方がよい。これが教育というものの根本原則だと思う。

『春宵十話』岡潔

 

 

 

【開催案内】哲学カフェ大分 12.17

 

 

 

◆「哲学カフェ大分 12.17 」  ※対面のみ
今回は「出会うことは偶然なのか必然なのか?」をテーマに哲学対話をしたいと思います。出会いには、恋人、配偶者や友人、師もあるでしょう。また人だけではなく、本や一篇の詩、学問、映画や土地との出会いもあるかもしれません。この出会いがなければ、人生が大きく変わっていたというのもあるでしょう。出会いとは偶然か、必然か。みなさんで考えましょう♪

○テーマ:出会うことは偶然なのか必然なのか?
○日 時:2022年12月17日(土)19:10-21:00
○会 場:大分コンパルホール
ファシリテーター:けん
○参加費:500円*飲み物等提供しませんので各自ご用意ください。
○定 員:約12名程度(要事前申し込み、先着順)
○備 考:開催当日お昼までにお申込みください。

 

参加申し込みフォーム
https://ws.formzu.net/fgen/S99148096/
icloudの方のメールの返信ができない事例が頻発しています。それ以外のメールアドレスで送っていただけると嬉しいです。申し込んでその日のうちに返信がない場合は迷惑メールフォルダをご確認ください。

 

 

【開催案内】別府鉄輪朝読書ノ会 12.18

 

 

「阿呆たれ!大阪は人間でいうたらへそや、大阪商人が闇稼ぎしたら、日本中にほんまの商人無うなってしまいよるわ、大阪商人の根性はなあ、信用のある商品を薄利多売して、その労苦で儲けることや、大阪の根性も知りくさらんと、ど性骨叩きあげたろか、闇屋、帰りくされ」『暖簾』山崎豊子

 

 

 

 

 

12月今年最後の読書会は国民作家、山崎豊子のデビュー作大阪船場の昆布商人を描いた『暖簾』を読んでいきたいと思います。山崎豊子は『白い巨塔』など、日本の男たちを描き得た数少ない作家だと思います。※直木賞受賞の『花のれん』ではないので、ご注意ください。

 

(内容)

一介の丁稚から叩きあげ、苦労の末築いた店も長子も戦争で奪われ、ふりだしに戻った吾平の跡を継いだのは次男孝平であった。孝平は、大学出のインテリ商人と笑われながら、徹底して商業モラルを守り、戦後の動乱期から高度成長期まで、独自の才覚で乗り越え、遂には本店の再興を成し遂げる。親子二代のれん"に全力を傾ける不屈の気骨と大阪商人の姿を描く作者の処女作。

 

○課題図書:『暖簾』山崎豊子新潮文庫
○日 時:2022年12月18日(日)10:00-12:00
○場 所:別府市鉄輪ここちカフェむすびの
ファシリテーター:しみず
○参加費:¥1,300円(運営費、むすびのさん特製のメニュー含む)
○定 員:12名程度(要事前申し込み、先着順)
○備 考:課題本を事前に読んで参加してください。
      12/15木までにお申込みください。

 

参加申し込みフォーム
https://ws.formzu.net/fgen/S99148096/
icloudの方のメールの返信ができない事例が頻発しています。それ以外のメールアドレスで送っていただけると嬉しいです。申し込んでその日のうちに返信がない場合は迷惑メールフォルダをご確認ください。

 

 

 

光りを伝える

 

 




 

 

 

いやはや、なんのための議論になったのでしたかな!初めは健康のことだったのに、死ぬ話になっちまうなんて。チェーホフ『ヴェローチカ』

 

 

 

光を伝える!こういう言葉は、会話にも本にもありませんが、それを考え出し、頭の中に見つけ出したのですからね!『聖夜』チェーホフ

 

 

 

夜の闇を初めとして、鉄板や、墓標の十字架や、その下で人びとが騒いでいる木々までのすべての自然に、ざわめきと不眠とを見たかった。『聖夜』チェーホフ

 

 

 

2022.11.21-27

月曜日

こどもたちと外を走っていると、いつの間にか体がしぼれている気がする。

 

 

火曜日

OAB大分朝日放送さんが撮影に来た。

カメラが学校に入ると生徒は緊張するむきもあるので、最小限にしていただく。

でもフリースクール内でのこども哲学の様子を撮ってもらって放映されるというのは、

かなり貴重なことで、これからの大きな布石になると思う。

 

 

W杯。サウジアラビアがアルゼンチンに勝った。

 

 

水曜日

勤労感謝の日に休めたのは何年ぶりだろうか。

 

 

日本がドイツに勝った。

熱狂する。ビールを久しぶりに飲む。

 

 

木曜日

いつも多い生徒さんも、今日はたまたま一人になって、

じっくり彼と向き合うとまたいつもと違う面が出てきて、

新しい関係性が出来てくるのがたいへん興味深い。

 

 

金曜日

OABの「じもっと!大分」でこども哲学について放映された。

放映前はすこし緊張した。

テレビで自分が話しているのを見るのは不思議な感じだ。

 

 

土曜日

小2の生徒さんに読んで欲しい本を薦めていく。

世代を越えて本で繋がっていくというのは、本好きとしてはとても幸せなことだ。

 

 

深夜までここちカフェむすびのさんの明かりが点いている。

明日の準備だろう。楽しみだ。

 

 

日曜日

別府鉄輪朝読書ノ会の開催。

内田百閒先生の『第二阿房列車』を読む。

鉄道に詳しい店主の河野さんに下駄を預けたような企画が成功した。

いい時間だった。

 

 

サッカー日本代表

終盤でコスタリカに敗れる。

ピッチには魔物が棲んでいる。

まだまだ経験値が足りないように思えた。

 

 

崔洋一死の報。

 

【開催報告】第七十八回 別府鉄輪朝読書ノ会

 

 

 

落ちついて考えて見ると、全く何も用事がない。行く先はあるが、汽車が走って行くから、それに任しておけばいい。

 

『第二阿房列車』内田百閒

 

 

 

11月の別府鉄輪朝読書ノ会を開催しました。

 

今回みなさんと読んだ作品は内田百閒『第二阿房列車』でした。

 

別府に行っても温泉には入らない、行き先に用事はなく、

列車に乗ることそのものが目的の、「阿房」の精神に贅や余裕、

ユーモアを感じながら、その作品世界を味わいました。

 

百閒先生は今で言う〈乗り鉄〉だと思いますが、

「絶景も却ってうるさい」という記述もあったりして、

また別のツボがあるのかもしれません。

 

 

 

 

今回はむすびの河野店主の鉄ちゃんぶりを披瀝。

国鉄時代の帽子や鋏、時刻表、硬券の切符など、たくさんのコレクションを

展示してくださって、参加者の皆さんもテンションが上がっていました。

ありがとうございました。

 

 

 

 

デザァトは、始皇帝阿房宮→不老不死→桃→ネクター→ネクタルから着想を得た、

洋梨と桃の飲み物でした。美味しかったです。

 


 

 

メインのお食事は駅弁をイメージした、

函館本線森駅のイカめしを洋風にアレンジしたものと、小倉駅かしわうどん

どれもたいへん美味しかったです。至福でした。

 

 

今回は趣向を凝らした展示といい、お食事といい、河野店長のアイデアが光りました。

たいへん楽しい空間ですごせました。ありがとうございました。

 

 

今後も年一回くらいは鉄道つながりの作品を選びたいなと思いました。

 

 

次回十二月は今年最後の読書会です。

山崎豊子『暖簾』を読んでいきたいと思います。