季節と時刻
このまちは、どの季節、どんな時刻に訪れるかで、見え方も感じ方も異なります。
8月中旬:盆休みで仕事がなく、
帰る場所のない人、
帰ることのできない人のために
盛大な夏祭りが行われます。
そこではこのまちで亡くなった人びとの慰霊祭も重要な儀式として
行われます。
年末年始:年末年始も原則として建築現場の仕事がありません。
日雇いで働いている人たちにとってそれは収入がないということです。
また寒さも厳しいため、この時期を乗り切るために
越冬闘争が行われます。
現在では祭りの要素も強くなってきました。
12月から2月:最も気温の低い時期であり、このまちの厳しさを
一番感じる時期です。
毎年どこかで路上死が発生していることはあまり知られていません。
3月末:このまちにつかの間の桃源郷が現れる時期です。
路肩や公園には色とりどりの花が咲き、
そこで車座になって酒盛りが行われています。
ココルーム制作「釜ヶ崎アーツガイドブック」
ココルームに戻って昼食をいただきました。
たいへん美味しかったです。
(Yさん撮影)
しばらく昼休憩があったので、のんびりしました。
Hさんは純喫茶が好きで、合間を見ては近所のカフェを探索していましたー。
ココルーム屋上より。あべのハルカス。
映画「(秘)色情めす市場」で見たような風景が広がっていました。
今回泊まった部屋。銀河鉄道の部屋。
宿の窓には格子があります。
お昼休憩後、ひと花センターに向かいました。
ひと花センターの上野さんに話を伺いました。
こちらの施設の主眼は「居場所」づくり。
別の部屋では囲碁を打っている風景が見られました。
居場所のための行政支援はかなり稀であるとのこと。
引きこもりになりがちな単身高齢者で生活保護を受給している方の社会参加、
生活支援のプログラムを行う事業として2013年7月にスタート。
事業に参加してもらうことを通して孤立を防ぎ、
地域・社会とのつながりをつくり、ひとりひとりがいきいきと生きられるよう、
またそれによって地域もいきいきとなっていくような活動をめざしています。
居場所といってもただ空間があるだけではなく、
居場所たりえるためのさまざまな試み、
特に「共に」「表現する」ことに力を入れていました。
詩や俳句、書、農作業、自転車リサイクル、
犬の散歩から哲学カフェのような対話の場もあるようです。
パンフレットのキャッチコピーにはこんな言葉が書かれていました。
ちょっと立ち寄って、にっこり
困ったことを話して、すっきり
みんなで何か作って、大発見!
新しいこと、はじめてみよう
明日の朝も、いいこと、ありますように
お酒や賭博が身近なのでしょう、あらゆるところでそれをモチーフにした作品が
釜ヶ崎では多く見られます。
そのまま2階に上がって「どーん!と西成」さんの説明を受けます。
小林さんに話を伺いました。
こちらはHUB機能をもった組織で、
釜ヶ崎に数多くある支援団体と利用者のマッチングをしています。
また「再チャレンジできるまち」として、
既存の制度では就労につながらなかった方に対し、
この街の資源(日雇労働市場・福祉サービス・協力企業)を活用して、
個々人に応じたマッチングを行っているとのことでした。
パンフレットには地域とのつながりのプログラムとして、
小学校の見守り隊への参加や、そうじイベントへの参加が書かれており、
以前読んだ本の一節を思い出しました。
通学路近辺の見守りや清掃に野宿者が雇用されれば、こどもたちと野宿者との交流も生まれ、就労の確保と野宿者への偏見の解消の両方が実現されることになる。『釜ヶ崎から』生田武志(ちくま文庫)
ぼくはこの施設の話しを伺ってから、この地域の福祉の充実度、考えられたケア、
福祉の町といわれる所以を強く感じ取っていきました。
ちなみにこの日は11月の2日で、1日が生活保護の支給日なので、
街自体ハッピーな空気になると小林さんは仰ってました。
病気
結核は日本ではほぼ克服された病です。
それは栄養状態と衛生状態の悪さが大きな原因となっています。
シェルターなど集団生活の場面も多いため感染の機会も多くあります。
そのため頻繁に結核検診が無料で行われています。
また糖尿病も多くみられます。
糖尿は栄養の過多によると理解されている場合が多いのですが、
極端に偏った食生活も大きな要因となります。
貧困状態に陥ると、糖質で空腹をしのぐ生活に陥りがちです。
これがこの地域で糖尿が多発する理由です。
ココルーム制作「釜ヶ崎アーツガイドマップ」より
お忙しいなか、ご対応ありがとうございました。
建物内はゆっくりとした時間が流れていて、とても居心地のいいところでした。
つぎは釜ヶ崎支援機構に向かいます。