バッグの底から、髪の先から、ひじからあごから雨は流れ落ち、わたしはスニーカーのなかで雨を踏み、これ以上はひきのばせないくらいの長い一歩を何度もかさねた。角をまがるところまで来たとき、目を閉じて、息を吐いた。そして祈るような気持で五秒をかぞえ、ゆっくりとふりかえってみた。でもそこには誰の姿もなかった。
第五十六回目の別府鉄輪朝読書ノ会を開催しました。
今回は川上未映子さんの『すべて真夜中の恋人たち』をとりあげて、
参加者のみなさんと対話していきました。
以下一部ですが、参加者の発言を箇条書きにまとめます。
・男として三束さんの行く末に興味がある
・英語の直訳のようなタイトルが謎めいていて気になった
・読むのが苦しかった。でも身につまされた
・タイトルがキラキラしているけど、中身がそうで内のが興味深かった
・引用的な感情では生きていない冬子さんと三束さん
・冬子さんの主体性を回復する物語りに涙が出た
・ずっともやがかかっていて、ぼやけていて、読んでいて苦しかった
・もらった香水が同じものだったことの意味は?
・入江や聖という名前に作者の仕掛けがある
・聖から見た三束さんが知りたかった
・冬子に苛立ちや苦しさを覚えるのは私の中にも同じものがあるから
・沈黙や待つことのできる冬子と三束の関係がよい
・これは恋愛小説なのでしょうか?
・土のスープのざらざら感から現実に戻った
「入江」という名前は浸食されて削られていく存在というイメージが僕にはありました。またすべてを受け入れる場所という意味も。
あと「しずかに」というのが漢字ではなく、ひらがなでひらかれていて、
これが書かれてある文章が10カ所くらいはあったと思うのですが、
それがかなり効いているというか、物語の鍵となっているなと感じました。
同じ本を読んだ人同士が集まって語り合うことの豊かな時間を
今回も味わうことができました。
むすびの河野さんの美味しい高級魚イトヨリのお料理も豪華で美味しかったです。
ありがとうございました。
今年最後の開催となりました。
来年も参加者のみなさまの忘れ得ぬ読書体験となるような作品を選んでいきたいと
思います。来年もどうぞよろしくお願いいたします。