お姉さん、…… 世の中の木がすべて兄弟みたい。
『菜食主義者』ハン・ガン(クオン)
六月の別府鉄輪朝読書ノ会を開催しました。
今回は初の韓国文学『菜食主義者』ハン・ガンをとりあげ、
みなさんと感想を交わしていきました。
登場人物への共感の度合いが憑依するかの如くに強い方もいれば、
部分的にわかるという方もいて、ホラーのようでもサスペンスのようでもあり、
生きていく上で避けられない暴力というものを文学として昇華させたとも読めました。
韓国出身の方の参加者が、韓国におけるベトナム戦争の位置づけや家父長制について
リアルな話をしてくださり、作品理解の助けになりました。
われわれは社会的な動物であり、社会が持つ夢も恨みも背負い込むことになる。
それを表面的にやり過ごしても責めることはできないが、
それは「生きた」とはいえないかもしれない。
社会からの因果を断ち切ることは狂気をもってしかできないかもしれないが、
その瞬間に究極の癒しへと放たれる一本道があるという感想も。
抑圧された女性性への解放とも、世界に内在する暴力との戦いとも読める
複雑な魅惑がこの作品にはあり、それが抽象ではなく、ブラジャーや胸、
菜食、木や花といった形で表出されるところ、ハン・ガンの才が味わえます。
本当にじぶんにとって切迫した作品はアンダーラインを引かせないものがあります。
登場人物と心の対話をし、グロテスクな部分に共感する意外な「私」を発見するのも、
読書の愉しみだと思います。
むすびのさん特製ドリンクは青紫蘇と柚子のドリンクでした。
特製メニューは主題と相俟って、野菜づくし!でした。たいへん美味しかったです。
初めての参加の方も何人かいらっしゃって、楽しんでいただいたようです。
ご参加ありがとうございました。
次回は7月25日、ドイツ文学『朗読者』ベルンハルト・シュリンク(新潮文庫)
をとりあげます。乞うご期待!