対話と人と読書|別府フリースクールうかりゆハウス

別府市鉄輪でフリースクールを運営しています。また「こども哲学の時間」など

濁りの大切さ

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剛力彩芽冬薔薇の束騎手に渡す トオイダイスケ

 

 

 

「私の中」に脳という器官が存在するのではない

「脳」の一部の機能として私が存在するに過ぎないのだ

 

 

 

『図書館の外は嵐』穂村弘

 

 

2022.1.31-2.6

 

月曜日

水道の設備業者の調査。

母屋に新たに露出配管を計画する。やれやれ

 

ネットで検索したら、京アニの放火と金閣寺の放火を同一視する論考が多く見られた。

 

最近の読書会は、昔の作品のなかにある男尊女卑に敏感に反応するシーンが散見されるようになった。かつて虐げられてきたり、嫌な思いの残像をそこに感じ取ってしまうのかもしれない。

 

 

 

火曜日

二月に入る。髪を切る。

少しでも切ると寒い。

 

石原慎太郎死去の報をラジオで。

2005年頃銀座で働いていたときに近くに高級料亭があって、

そこから酔った石原氏が出てきたのを見たが、テレビの印象とは違って、

ずいぶん爺ちゃんだなと思った。

 

太陽の季節』の有名な男根で障子を突き破るシーンは、その6年くらい前に書かれた武田泰淳『異形の者』に同じ描写があるのを読書会で知った。

 

石原慎太郎がいただいたわけだけど、その『太陽の季節文學界新人賞の選考委員の一人として評したのは武田泰淳その人だった。中国に対する態度が両者で正反対なのも興味深い。

 

 

水曜日

やまと尼寺を見ていたら天川村の節分祭「鬼の宿」の神事を写し出していた。

鬼を迎え宿泊してもらうために、きちんと布団を敷いて入りやすいように

少し布団を上げていた。

それにしてもこの尼寺の享楽に満ちた(永平寺とは真逆の)、

たとえば食事中の楽しげな会話など驚くべきことだと思う。

 

 

 

木曜日

漏水した母屋の水道工事。

和気藹々と作業しているのが良い。

怒声が響くような現場は嫌いだ。

 

節分。

季を分けていく、実感とのずれがあっても、

先に春と呼ばれるものがくる。

でももっとも極まった寒さのなかにこそ、

春の因子が含まれているに違いない。

 

 

金曜日

立春。でも寒い。

寒さは人を萎縮させる、もしくは緊張させる。

 

眠り、というものに充実感を覚えるのか、ただの無駄な生物的な休息としか感じられないのか、私は前者だが、それはどこかに行く、旅立つという感覚が甘い疲労のようなものを伴ってあるからかもしれないと最近思い始めた。たぶん人にも猫にも冬眠はある。

 

 

打ち合わせ。

最初の核となるような打ち合わせの時間以上に楽しいときはないだろう。

夢想できるだけ夢想できるし、ここでできるだけ遠くの射程をとらえたい。

 

 

 

わかったな それが

納得したということだ

旗のようなもので

あるかもしれぬ

おしつめた息のようなもので

あるかもしれぬ

旗のようなものであるとき

商人は風と

峻別されるだろう

おしつめた

息のようなものであるときは

ききとりうるかぎりの

小さな声を待てばいいのだ

 

 

石原吉郎「納得」

 

 

 

 

土曜日

積雪した鉄輪温泉街。

 

 

留学生をまじえた哲学対話を初めて開催する。

その名も、P4E(Philosophy for Everybody)。

日本語の不慣れな彼らが安心して語り、聴き、考える場としても、

哲学対話の場が充分有効であることが大きな発見だった。

APUの学生さんでボランティアしたいと言ってくれたのが嬉しかった。

年齢関係なく、みんなが先生であり、みんなが生徒でもあり、

それぞれの才能が花開く、わいわいがやがやの場所にしたい。

 

 

夜、小説家の西村賢太氏、建築家の柄沢祐輔氏が亡くなったとSNSで知る。

50代と40代。

ハートアタックか。

寒いときに人は死ぬのか。

 

いつ死んでも早いとか遅いとかはないのかもしれないが、

もう彼らの作品を見ることはないというのは大きな損失のように感じる。

 

https://www.architectmagazine.com/design/buildings/s-house-designed-by-yuusuke-karasawa-architects_o

 

 

日曜日

冷える。

冷えると睡眠が長くなる。冬眠そのもののように。

今日で最後の冬の日にしてほしい。

でもこういう日こそ温泉がすばらしい。

入るとみんな声が漏れる。

 

 

夜はオンラインで対話勉強会。

ファシリテーター自身が対話が終わった後にチェックすべき項目について話し合う。

みんなが大切にしたいことはだいたい似ていた。

対話のテンポだったり、分からないことを放置しないとか、沈黙を大切にするとか。

2時間はいつもあっという間に過ぎる。