吾平は寝る時も枕元に算盤を置いた。ふと、商算がうかべば、人の寝しずまった深夜にも、まだ空が白まない夜明け方にもむっくり起き上がり、寝床の上に几帳面に端坐して、一心に算盤をはじいた。油垢に黒く光った算盤の上を、節くれだった太い指先が、飽くことなく動いた。
『暖簾』山崎豊子
12月、今年最後の別府鉄輪朝読書ノ会。
外はなんと雪が降っていました。
雪のなかでしたが、多くの方に参加していただきました。
ありがとうございました。
今回とりあげた作品は山崎豊子『暖簾』。
明治、大正、昭和と激動の時代を生き抜いた大阪船場の昆布商人の話です。
参加者のなかに大阪の方がいて、船場の大まかな話をしていただきながら、
作品世界のなかに入っていきました。
今回は具に見ていくよりも、山崎豊子の愛した大阪、船場の空気そのものを
同じ目線で味わっていくというような読書会でした。
大阪商人も大阪の文化もやっぱりいいなあと改めて感じながら、
また大阪を題材とした作品を選んでいきたいと思います。
むすびのさんからの特製メニューは、
船場汁(鯖と大根)と小田巻き蒸しという茶碗蒸しのなかに
うどんが入ったものでした。たいへん美味しかったです。
今年の読書会もこれで終わりです。
今年一年ありがとうございました。
本や人とのいろんな出会いがありました。
来年も唸らせるような小説を選んでいきたいと思います。
よろしくお願いします。