対話と人と読書|別府フリースクールうかりゆハウス

別府市鉄輪でフリースクールを運営しています。また「こども哲学の時間」など

複数の窓、窓から窓へ

 

 

Atami , 2006

 

 

するとそのとき、こういったさまざまの文学的関心とはまるで別のところで、それとはまったく関係なしに、突然、一つの屋根、一個の石の上にきらりと光る太陽の光、ある道から立ち上がる香りが、特別な喜びを与えて、私の足をとめさせるのだった。

 

失われた時を求めて 1 』マルセル・プルースト 鈴木道彦訳

 

 

 

 

2023.1.2-8

月曜日

2023年。真新しい日。

清く、澄んだ空がずっとつづいた。

 

 

火曜日

積ん読本を静かに読んでいく日日。

吉増剛造『詩とは何か』

今福龍太『ヘンリーソロー 野生の学舎』

町田康『告白』など

 

 

水曜日

4日にもなると、正月の感じが消えて、世間が動き出している。

年始の清らかな感じがなくなるのだと思うと、なんとも悲しい。

 

 

木曜日

うかりゆ初め。

今日から再開に再会。

こどもたちと会うのが嬉しい。

 

会社勤めの時の年明けの勤務始めは苦しさしかなかったが、

いまは喜ばしい。

いまの時代はどういうマインドで働いているのかが、全てだと思う。

 

 

書き初めをする。

墨を擦る音が心を鎮めるマインドフルネスのよう。

筆触のすばらしさ。

久しぶりの書。

見る専だったので。

筆を入れる力、筆の速度、墨の量、書かれる文字、紙と筆の無限なる複雑系

見るのとやってみるのと大きな違い。

書くことは楽しい。

お香を焚くように書をしたい。、

 

 

 

金曜日

ソーシャルワーカーの方と話をする。

こことここを繋げると社会がスムーズになっていくというのはたくさんあると思う。

その間に立つ人の重要性。

 

 

フーコーの私の仕事は壁のある場所に窓を取り付けることだ、という言葉を気に入っている。

 

 

土曜日

ふたたびの連休。

本を読む。

ともだちの私的なラジオを聴く。

引っ越すことは死ぬことに近いとの言葉。

確かに。

引っ越しの時に荷物を整理し、何物(者)かを廃棄し、

新たなる場所へ向かう。

それは確かにひとつの死のような体験であろう。

わたしはミニマリズムにある理や効果を認めつつも、

それが苦しいと感じることがあるのは、、

たぶん捨てるということが、死のような体験だからと思う。

転々と住む場所を移していったユダヤ人は、

ある決まった愛着のある家具だけはずっと持ち続けたという話。

 

 

 

日曜日

礼服をつくる。

 

 

キャンプやサウナブームの精神とソローには通底するものを感じる。

そこには沈黙や静寂がある。外界と精神の両方がかさなる。

焚き火のはぜる音やスチームのたちのぼる音。

 

 

 

音は沈黙が発するかすかな声であり、沈黙によって引き立てられたときだけ私たちの耳にとって心地よいものとなる。ソロー