対話と人と読書|別府フリースクールうかりゆハウス

別府市鉄輪でフリースクールを運営しています。また「こども哲学の時間」など

【開催報告】第八十二回 別府鉄輪朝読書ノ会 3.26

 

 

 

なにしろ、わたしが知らないうちにとつぜん何かが終ったのであり、そして今度は早くも、わたしが知らないうちにとつぜん何かがはじまっていたのである。

 

『挾み撃ち』後藤明生

 

 

 

 

三月の別府鉄輪朝読書ノ会を開催しました。

 

今回は前回のゴーゴリ『外套』に憧れ続けた男、後藤明生の『挾み撃ち』を

みなさんと読んでいきました。

 

とても大好きな小説なのでいつかはこの読書会で取り上げたいと考えていたものの、

その「異質」な小説の在り方に二の足を長らく踏んでいましたが、前回の『外套』

とのセットということで、思い切って『挾み撃ち』しました。

 

読みづらかった、時代背景がつかめなかったという声もあった一方で、面白かった、不思議な読後感だった、作者の脳内を散歩しているようだった、斬新だったという声も聴かれました。

 

この小説は、宛先のない手紙のようで、行きつ戻りつ、肝心な外套のことも忘れたり、思い出したり、結局なにも起きず、ラストは冒頭の橋に戻るのですが、なにかとてつもない文学体験をしたような、疲労感とともに呆然とさせられます。そこを「面白い」と感じてもらえれば、推した甲斐があったというものです。

 

またある参加者の女性はこの作品に描かれている娼婦などについての記述に共感のしづらさを感じたとの感想から、文学におけるポリティカルコレクトネス(社会の特定のグループのメンバーに不快感や不利益を与えないように意図された政策(または対策)などを表す言葉の総称であり、人種、信条、性別などの違いによる偏見や差別を含まない中立的な表現や用語を使用することを指す。)への言及もありました。

 

様々な意見をありがとうございました。

 

 

 

この日のむすびのさんの特製メニューは作中に出たそば屋のカレーの「黄色」に注目して、ターメリックを使ったスープなどが提供されました。またグラタンは薄色の焦げの皮膜がコートされたものという意味があるようで、コート→外套というコンセプトでした!たいへん美味しかったです。

 

 

 

ご参加ありがとうございました。

 

次回四月は夏目漱石『門』を読んでいきたいと思います。