対話と人と読書|別府フリースクールうかりゆハウス

別府市鉄輪でフリースクールを運営しています。また「こども哲学の時間」など

【開催報告】第九十六回 別府鉄輪朝読書ノ会 5.26

 

 

 

だったら、殺すために孕もうとする障害者がいてもいいんじゃない?

 

『ハンチバック』市川沙央

 

 

 

 

 

 

 

五月の別府鉄輪朝読書ノ会を開催しました。

今回とりあげた作品は市川沙央さん『ハンチバック』でした。

 

様々なテーマが内包されていて議論の尽きない回で、これからという時に終わった感じでしたが、みなさん終了時には充実した感じで帰られて良かったです。

 

少し会で話し合った内容をまとめると。

通俗的な小ネタの充実

・怨念や呪いのようでもあり、ユーモアさもある

・性や生殖についてのこじらせがテーマではないか

・主人公が中絶したいという思いをどう受け止めれば(どう解釈)いいのか

・結末をどう解釈したか

・バリアを作っている書物。バリア合戦、バリアの可視化の企て

・怒りではなく、問題提起をしている

・田中さんだけが一線を越えて、こちらに来た

・中絶こそが釈華にとって人間になれるチャンスと捉えている

・(健常者?)がしていることを釈華さんもしたい

・作品のなかで遊んでいる

・経験しているから優位なわけではない。小説がそう

 

 

こうやって対話された内容をまとめていて、ふと思ったのは、この小説は破壊的な面もあるけど、最終的に自身(作者も主人公も)を肯定するために書かれた。何もできない、経験ができずに生涯を終えても、そこに書くことでの創造、飛翔があれば、欠落感に苛むこともない、ここに書くことと生きることが同じであるという道筋が開かれる、だからラストは単なる幻想ではない力を持ちうると考えました。

 

 

 

この日のむすびのさん特製メニューのテーマは〈規格外〉、規格に収まらないことを肯定的に捉えて、スープには規格外に小さいタマネギに規格外に大きいじゃがいも、ホイル焼きには、規格外に大きいアスパラ、トマト、パプリカ、そして大きすぎて市場に出回りにくいヤガラで、どれもたいへん味わい深く美味しかったです。ありがとうございました!

 

 

ご参加ありがとうございました。市川沙央さんは新作も書かれたようで読んでみたいです。

 

来月は朝井リョウさんの『何者』(新潮文庫)を読んでいきます。

お楽しみに。