だったら、殺すために孕もうとする障害者がいてもいいんじゃない?
『ハンチバック』市川沙央
五月の別府鉄輪朝読書ノ会を開催しました。
今回とりあげた作品は市川沙央さん『ハンチバック』でした。
様々なテーマが内包されていて議論の尽きない回で、これからという時に終わった感じでしたが、みなさん終了時には充実した感じで帰られて良かったです。
少し会で話し合った内容をまとめると。
・通俗的な小ネタの充実
・怨念や呪いのようでもあり、ユーモアさもある
・性や生殖についてのこじらせがテーマではないか
・主人公が中絶したいという思いをどう受け止めれば(どう解釈)いいのか
・結末をどう解釈したか
・バリアを作っている書物。バリア合戦、バリアの可視化の企て
・怒りではなく、問題提起をしている
・田中さんだけが一線を越えて、こちらに来た
・中絶こそが釈華にとって人間になれるチャンスと捉えている
・(健常者?)がしていることを釈華さんもしたい
・作品のなかで遊んでいる
・経験しているから優位なわけではない。小説がそう
こうやって対話された内容をまとめていて、ふと思ったのは、この小説は破壊的な面もあるけど、最終的に自身(作者も主人公も)を肯定するために書かれた。何もできない、経験ができずに生涯を終えても、そこに書くことでの創造、飛翔があれば、欠落感に苛むこともない、ここに書くことと生きることが同じであるという道筋が開かれる、だからラストは単なる幻想ではない力を持ちうると考えました。
この日のむすびのさん特製メニューのテーマは〈規格外〉、規格に収まらないことを肯定的に捉えて、スープには規格外に小さいタマネギに規格外に大きいじゃがいも、ホイル焼きには、規格外に大きいアスパラ、トマト、パプリカ、そして大きすぎて市場に出回りにくいヤガラで、どれもたいへん味わい深く美味しかったです。ありがとうございました!
ご参加ありがとうございました。市川沙央さんは新作も書かれたようで読んでみたいです。
来月は朝井リョウさんの『何者』(新潮文庫)を読んでいきます。
お楽しみに。