
哲学対話に関する本は、ここ10年でたくさん出版されてきました。どれを読んでも、学びや気づきがわたしにはあるのですが、哲学対話をより深めていくためにインスピレーションを得たのは、むしろ哲学対話以外の著作でした。たとえば、今回紹介するカウンセリングの神様と呼ばれたカール・ロジャースの思想。
ロジャースの三原則
①共感的理解
相手の話を、相手の立場に立って、相手の気持ちに共感しながら理解しようとすること。
②無条件の肯定的関心
相手の話を善悪の評価や好き嫌いの評価をせずに聴くこと。相手の話を否定せず、なぜそのように考えるようになったのか、その背景を肯定的な関心を持って聴くこと。それによって、話し手は安心して話ができる。
③自己一致
聴き手が相手に対しても、自分に対しても真摯な態度で、話が分かりにくい時は分かりにくいことを伝え、真意を確認すること。分からないことをそのままにしておくことは、自己一致に反する。
ロジャースのカウンセリングの思想の射程は広く遠く、カウンセリングというジャンルにとどまらず、学校や教育、家庭、政治の場でも、〈わかりあう〉ためのコミュニケーションとして応用可能です。わたしには上記の三原則が特に下線部が哲学対話そのもののことを述べているようにも読めます。
特に「確認する」ということについて、別のところではこう書かれています。
あなたが考えていることや感じていることを、あなた自身の内側に視点を置いて、あなた自身になりきったかのようにして、ていねいに確認しながら理解してくれる人がいなければ、あなたが自分らしく生きていくことは難しい。
『カール・ロジャース〜カウンセリングの原点』諸富祥彦(角川選書)
哲学対話ではグループ・ダイナミクスによって、どうしても確認作業が怠りがち。わからないことや不明なところ、あるいは感情がこじれたときなど、対話の流れをとめるかスローにするかして、「それは〜のことですか?」と確認することが重要です。自戒をこめつつ書いています。もちろん、それが詰問や理解の押し付けになってしまっては元も子もないのですが。
次回は言語化について書いてこのわかりあうための対話シリーズの考察はいったん終えようと思います。
最後につづく