被災・疎開の極限状況から敗戦という未曽有の経験の中で、我が身を燃焼させつつ書きのこした後期作品16編。太宰最後の境地をかいま見させる未完の絶筆「グッド・バイ」をはじめ、時代の転換に触発された痛切なる告白「苦悩の年鑑」「十五年間」、戦前戦中と毫も変らない戦後の現実、どうにもならぬ日本人への絶望を吐露した2戯曲「冬の花火」「春の枯葉」ほか「饗応夫人」「眉山」など。 (「BOOK」データベースより)
7月24日(日)の第四回目となる別府鉄輪朝読書ノ会では、
太宰治の絶筆『グッド・バイ』を採り上げます。
また新潮文庫に収められている他の短編も課題図書の範囲とします。
わたしは学生時代から10年ちょっと三鷹に住んでいた時期がありまして、
すぐ近所には太宰が入水自殺をした玉川上水やお墓のある禅林寺があり、
文学好きな友人が上京してくればそこをいつも案内していましたが、
わたし自身はと言えば、中学や高校のときにいくつか代表作を読んでいた程度で、
それほど太宰の熱心の読者ではありませんでした。
むしろ太宰に関してはあまりいい印象をもっていなかったとさえ言えるのですが、
あるとき青空文庫で『女生徒』を読む機会があり、
その女生徒が乗り移ったとしか思えない言葉のつらなりにかなりの衝撃を受けて
太宰に対する認識を全面的に改めたのでありました。
端的に言うと、わたしは「ふざけた」人が大好きなのです。
ふざけることしかできないというのか、彼の言う道化とも少し違うのですが、
この世界がどうしても一つの巨大な冗談に見えてしまう、
その世界観に共感したのでした。
ということで、それが最も極まっていると思われる『グッド・バイ』を
七月は採り上げてみることにします。