対話と人と読書|別府フリースクールうかりゆハウス

別府市鉄輪でフリースクールを運営しています。また「こども哲学の時間」など

読書会

【開催報告】第八十四回 別府鉄輪朝読書ノ会

なるべくちゃんとしていない、体に悪いものだけが、おれを温められる。 食べる者の顔などが分からない人たちが作った、正確な食べ物。 『おいしいごはんが食べられますように』高瀬隼子 五月の別府鉄輪朝読書ノ会を開催しました。 今回とりあげた作品は高瀬…

【開催案内】第八十四回 別府鉄輪朝読書ノ会 5.28

藤さんはいいよな、おれと同じだけ残業したって家に帰ればああいう食べ物が頼まなくても出てきて、朝飯も昼の弁当も用意されていて、食べることを考えなくたって生きていける。 『おいしいごはんがおいしく食べられますように』高瀬隼子(講談社) ◆「別府鉄…

【開催報告】第八十三回 別府鉄輪朝読書ノ会

彼等は山の中にいる心を抱いて、都会に住んでいた。 『門』夏目漱石 四月の別府鉄輪朝読書ノ会を開催しました。 満員御礼の、キャンセル待ちの回でした。 今回で7周年を迎えまして、ここまで続けられてうれしいです。 今でも毎回新しく初参加して、リピート…

【四月のご案内】第八十三回 別府鉄輪朝読書ノ会 4.23

ある時はひそかに過ぎた春を回顧して、あれが己の栄華の頂点だったんだと、始めて醒めた眼に遠い霞を見る事もあった。 『門』夏目漱石 ◆「別府鉄輪朝読書ノ会 4.23 」四月は夏目漱石『門』(新潮文庫)を読んでいきます。略奪婚の先に幸せはあるのか――。たま…

【開催報告】第八十二回 別府鉄輪朝読書ノ会 3.26

なにしろ、わたしが知らないうちにとつぜん何かが終ったのであり、そして今度は早くも、わたしが知らないうちにとつぜん何かがはじまっていたのである。 『挾み撃ち』後藤明生 三月の別府鉄輪朝読書ノ会を開催しました。 今回は前回のゴーゴリ『外套』に憧れ…

【開催案内】第八十二回 別府鉄輪朝読書ノ会 3.26

わたしはゴーゴリの『外套』を翻訳中の露文和訳者でもない。しかし、あのカーキ色の旧陸軍歩兵の外套を着て、九州筑前の田舎町から東京へ出て来て以来ずっと二十年の間、外套、外套、外套と考え続けてきた人間だった。たとえ真似であっても構わない。何とし…

【開催報告】第八十一回 別府鉄輪朝読書ノ会

何処かとんと見当もつかないほど遠くの方に、まるで世界の涯にでも立っているように思われる交番の灯りがちらちらしていた。 『外套』ゴーゴリ(平井肇訳) 二月の別府鉄輪朝読書ノ会を開催しました。 ご参加ありがとうございました。 今回とりあげた作品は…

【開催案内】別府鉄輪朝読書ノ会 2.19

しかし、これはどうも仕方がない!罪はどうもペテルブルグの気候にあるのだから。 『外套・鼻』ゴーゴリ 二月の別府鉄輪朝読書ノ会の案内です。 ゴーゴリはロシア文学を代表する作家ですが、出身はウクライナです。 ◆「別府鉄輪朝読書ノ会 2.19 」寒い二月は…

【開催報告】別府鉄輪朝読書ノ会 1.29『愛のゆくえ』

今、この仕事ができるのはアメリカ広しといえどもわたしひとりきりだろう。そしてそれが今わたしのしていることなのだ。ここでの仕事が終わったあとは、なにかほかのことを探すつもりだ。未来にはたくさんのことが私を待ちかまえていると信じている。 ああ、…

【開催案内】第八十回 別府鉄輪朝読書ノ会 1.29

ぼくにわかっているのは、そこにいなければならないということだけさ。それがぼくの仕事なんだ。あそこにいなければならない。 『愛のゆくえ』リチャード・ブローティガン ついに別府鉄輪朝読書ノ会も八十回! 年明けての課題図書はブローティガンの『愛のゆ…

【開催報告】第七十九回 別府鉄輪朝読書ノ会 12.18

吾平は寝る時も枕元に算盤を置いた。ふと、商算がうかべば、人の寝しずまった深夜にも、まだ空が白まない夜明け方にもむっくり起き上がり、寝床の上に几帳面に端坐して、一心に算盤をはじいた。油垢に黒く光った算盤の上を、節くれだった太い指先が、飽くこ…

【開催案内】別府鉄輪朝読書ノ会 12.18

「阿呆たれ!大阪は人間でいうたらへそや、大阪商人が闇稼ぎしたら、日本中にほんまの商人無うなってしまいよるわ、大阪商人の根性はなあ、信用のある商品を薄利多売して、その労苦で儲けることや、大阪の根性も知りくさらんと、ど性骨叩きあげたろか、闇屋…

【開催報告】第七十八回 別府鉄輪朝読書ノ会

落ちついて考えて見ると、全く何も用事がない。行く先はあるが、汽車が走って行くから、それに任しておけばいい。 『第二阿房列車』内田百閒 11月の別府鉄輪朝読書ノ会を開催しました。 今回みなさんと読んだ作品は内田百閒『第二阿房列車』でした。 別府に…

【開催案内】第七十八回 別府鉄輪朝読書ノ会

私の座席の窓は曇らない。 内田百閒『第二阿房列車』 十一月の別府鉄輪朝読書ノ会の案内です。 今年は鉄道開業150周年とのこと。十一月はレールの繋ぎ目が刻む音を愛する究極の鉄ちゃん、内田百閒の『第二阿房列車』(新潮文庫)を読んでいきます。第一阿房…

【開催報告】第七十七回 別府鉄輪朝読書ノ会

その夜のランニングは六月にはじめて、走ることを命じられた夜に似ていた。 『草の響き』佐藤泰志 こんにちは。 十月の別府鉄輪朝読書ノ会を開催しました。 今回選んだ作品は佐藤泰志『きみの鳥はうたえる』『草の響き』でした。 80年代のまだ「余力」のあっ…

【開催案内】第七十七回 別府鉄輪朝読書ノ会

◆「別府鉄輪朝読書ノ会 10.30 」十月は村上春樹と同い年ゆえにその栄光の影に隠れ、目立った文学賞を獲ることなく自死してしまった作家佐藤泰志氏の作品をとりあげます。没後30年、近年評価が著しく高まり、多くの作品が映画化されています。今回は『きみの…

【開催報告】別府鉄輪朝読書ノ会 9.25

「だまされてるの?」 「わたし? だまされてないよ」 そのあと妙な沈黙があった。 『星の子』今村夏子 第七十六回目の別府鉄輪朝読書ノ会を開催しました。 今回とりあげた作品は『星の子』今村夏子でした。 新興宗教2世が題材となっていて、作品自体は2017…

【開催案内】第七十六回 別府鉄輪朝読書ノ会 9.25

「教えてやる。おれとおまえ、将来結婚するんだよ」 「エッ」 『星の子』今村夏子(朝日文庫) ◆「別府鉄輪朝読書ノ会 9.25 」九月は新興宗教2世を扱った『星の子』今村夏子(朝日文庫)を読んでいきます。(内容紹介)林ちひろは中学3年生。病弱だった娘を…

【開催報告】別府鉄輪朝読書ノ会 8.28

待っている兵はいらいらしてきた。それほど彼等は若い女に接しなかったし、戦場に居ると不思議と女のことばかり考えるものであった。 『生きている兵隊』石川達三 八月の別府鉄輪朝読書ノ会を開催しました。 八月は毎年戦争文学を読んでいて、今年は『生きて…

【開催報告】第七十四回 別府鉄輪朝読書ノ会

残された熱気とともに夜へむかい、ゆっくりと沈んでいこうとしている夏の夕刻は、いろんなものがこんなにはっきり見えるのに、いろんなものがあいまいだ。懐かしさとか優しさとか、もう取り返しがつかないことやものたちで満ちていて、そんなもやのなかを歩…

【七月のご案内】別府鉄輪朝読書ノ会 7.31

七月の別府鉄輪朝読書ノ会の案内です。 ◆「別府鉄輪朝読書ノ会 7.31 」七月は生誕、出生や反出生主義について考えたいと思います。川上未映子『夏物語』(文春文庫)を読んでいきます。(内容紹介)大阪の下町に生まれ育ち、小説家を目指し上京した夏子。38…

【開催報告】第七十三回 別府鉄輪朝読書ノ会

あのどぎ、おらは見つけでしまったのす。喜んでいる、自分の心を。んだ。おらは周造の死を喜んでいる。そういう自分もいる。それが分がった。 『おらおらでひとりいぐも』若竹千佐子 六月の別府鉄輪朝読書ノ会を開催しました。 今回は『おらおらでひとりいぐ…

【開催報告】絵本 de 考えるカフェ 6.22

6月の「絵本de考えるカフェ」を開催しました。 大人と子ども、プラスオンラインで繋いで進めて行きました。 今回とりあげた絵本はブレイディみかこ作「スープとあめだま」。 私が読み聞かせをするスタイルで物語を朗読し、 その後、この作品についての感想や…

【ご案内】絵本 de 考えるカフェ 6.22

◆「絵本 de 考えるカフェ 6.22」(対面のみ)最後に絵本を読んだのはいつですか?忘れられない絵本はありますか?絵本の作品世界を味わって、そのテーマに込められた世界観を考え語り合いませんか?今回はホームレスや施し、夜回りについて大人もこどもも楽…

【6月のご案内】別府フリースクールうかりゆハウスのスペシャルイベント

6月のイベント情報のご案内です。 すべて別府市鉄輪のフリースクールうかりゆハウスにて開催します。 参加希望者は、以下の申込みフォームより参加したいイベント情報を明記して ご参加ください。 参加申込みフォーム。icloud以外のメールアドレスでの申請を…

【ご案内】第七十三回 別府鉄輪朝読書ノ会 6.26

体をがむしゃらに動かすと、熱くて息苦しくて一枚また一枚と服を脱いで、真新しい仏壇の前で、真っ裸で踊っていた日を桃子さんは忘れていない。 『おらおらでひとりいぐも』若竹千佐子 六月はベストセラーになり映画化もされ、63歳で作家になった若竹千佐子…

【開催報告】第七十二回 別府鉄輪朝読書ノ会 5.29

あの朝に感じためまいにも似た感覚は、ずっと昔、小学校から帰るときに経験したのとおなじものだが、自分のもっともな思い出のひとつになっている。あれはいったい何だったのだろう?女の先生がぼんやりした様子で、ほら、そよ風よ、あれが見えないの?と言…

【開催案内】第七十二回 別府鉄輪朝読書ノ会

「満九十歳の誕生日に、うら若い処女を狂ったように愛して、自分の誕生祝いにしようと考えた。」 五月は以前この読書会で扱った川端康成の『眠れる美女』に着想を得て書いた南米のガルシア・マルケス最晩年の作品『わが悲しき娼婦たちの思い出』(新潮社)を…

「絵本 de 考えるカフェ」を開催します

絵本を読んで、そのテーマを深掘りし考える。絵本カフェを開催します☆ とき:4月28日(木)14時30分〜15時30分 ところ:別府鉄輪うかりゆハウス テーマ:「絵本 de 考えるカフェ」 一緒に絵本を読んで、考えることを楽しもう! えほん:『ほっきょくでうしを…

第七十一回目の別府鉄輪朝読書ノ会を開催しました。

向かいのアパートで明かりのついている窓は三つだけ。さっきまで灯っていたのとは別の窓だった。あの窓のむこうでうごめいている人たちは、ヴィクトルのことになど何の関心もないだろう。できれば、この間の眠れない夜、目にしたあの女性の姿を見たかった。…