かけがえのない他人、は、まどかにとって特別な意味を持つ言葉だ。
ホットケーキを食べたりおてがみを送ったりするような普遍的なことをしていても世界がきらめいて見えるような、他の人では代替不可能な関係のことを、かけがえのない他人同士と名付けていた。
『N/A』年森瑛
松井まどか、高校2年生。
うみちゃんと付き合って3か月。
体重計の目盛りはしばらく、40を超えていない。
――「かけがえのない他人」はまだ、見つからない。
優しさと気遣いの定型句に苛立ち、
肉体から言葉を絞り出そうともがく魂を描く、圧巻のデビュー作。
★★★
文學界新人賞・全選考委員激賞!!
ここには誰のおすみつきももらえない、
安易なマイノリティ表現への違和感の表明であり、
世界が傷つくとみなす事項に対する、最初からの「傷ついてなさ」
主人公にとって、また小説にとって、とても重要なもの、