結果、暗い深海にもぐったまま、どんな罠も仕掛けも策も及ばぬ遠くを目指すことにしたのだろう。それでこっちも、どんな人間も追いつけないところまで追いかけることにした。世界中のだれも手も届かないところまで追うことにした。そのあげく、いまこうして、正午からずっと、あいつとつながっている。おれもあいつも、孤立無援だ。
四月の別府鉄輪朝読書ノ会を開催しました。
今回みなさんと読んだのはヘミングウェイの『老人と海』でした。
私は今回改めて再読して、「少年」の存在の大きさを感じ、不在の少年を想うロマン
(小説)としても読めました。
今回の読書会の中心になったトピックは「老い」についてで、
その迎え方、受け入れ方についての男女差や老害とか、過去の栄光、独り言、
この老人のもっているしなやかさなどの意見が聞かれました。
私はこの読書会のような地域コミュニティを主催していることもあり、
この作中での漁村でのゆるやかな繋がりがとても好きだし気になるところでした。
それはこの老人の豊かな人間性によって成立しているという指摘もあり、
孤独ではあっても孤立はしていないみたいなところがどう可能なのか、
深めてみたいところでもありました。
ご参加ありがとうございました。
今回のむすびのさんの特製メニューは、作中にも出てきたシイラのホイル焼きで
以前の『老人と海』の訳ではイルカと誤訳されていたそうです。
あと豆とトウモロコシの入ったメキシコのスープでした。
美味しくいただきました。ありがとうございました。
いつもマイナーな作品ばかりを多くとりあげているこの読書会ですが、
『老人と海』のような古典や世界文学として読まれている作品のもつ普遍性や
力を感じて、ああ文学っていいなあと改めて思ったものでした。
次回5月は26日に開催します。
読んでいく作品は『ハンチバック』市川沙央(文藝春秋)です。
お楽しみに。