対話と人と読書|別府フリースクールうかりゆハウス

別府市鉄輪でフリースクールを運営しています。また「こども哲学の時間」など

OAB大分朝日放送さんからこどもの哲学の取材・撮影を受けました。

 

 




OABさんが当フリースクールのこども哲学を取材・撮影してくれて、先日「じもっと!OITA」で放送されました。端的にこども哲学をまとめていただいて嬉しかったです。YouTubeにもアップされたので、ぜひご覧ください。

 

www.youtube.com

人間への全き無関心

 

 

 

 

 

長い、露のやどった口ひげを撫でながら、彼はずしりと馬にまたがって、何か忘れものがあるか、言い足りないかといったふうで、目を細めて遠くのほうを見た。いちばん地平線や果てしない曠野のあちこちに聳えている物見や古墳が、いかめしく、ひっそりと見おろしていた。じっと音もなく立ちつくすその姿には、幾世紀もの歳月と人間への全き無関心とが感じられた。これからさき千年たとうが、何十億の人が死のうが、物見や古墳は相変わらず立ちつくし、すこしも死者を悼むこともなく、生者に興味を抱くこともないだろう。そうして誰ひとり、なんのためにそれらが立ちつくすのか、どんな曠野の秘密がその下に隠されているのかを知ることもないだろう。

 

『幸福』チェーホフ

 

 

 

 

2022.11.14-20

月曜日

新米が美味しくて、つい炭水化物を多くとってしまう。

 

別府の入り組んだ古くて細い道を歩くと、整然と整備された直線的な道よりも、

オーガニックな感じがして、より体に馴染みがある。

 

訪れたお家が、過去に自分と縁のあったお家だったことに驚く。

縁起と思念というものは、どういう関係なのかわからないけど。

 

 

火曜日

私用のため休み。

しかしながら、私用と公用の区別がいまいちなくなった。

 

 

 

水曜日

感情的な子どもほど実は論理的で曖昧さはなく明快である。

ただその「論理」の有り様が解明し難いものをもっているだけで。

 

テレビの取材要請がくる。

こども哲学や哲学対話の良さが世間によく知られますように。

 

 

木曜日

こどもたちとサッカーをしていて、ボールが思いも寄らない方向にバウンドして、体に当たったり、ドリブルで抜く際足と足がぶつかったりすると、泣いて怒り出す子もいて、サッカーという楽しさだけを体験したくて、痛みだけは悪なものとして除去したいのかもしれないけど、痛みもまたサッカーの一部であること知るためには、単純な善と悪という二項対立を超えた地平に立つ必要がある。

 

 

金曜日

駆け回る。

 

 

土曜日

畳を新調する。

い草の良い香りがすばらしい。

この香りをこどもたちにも味わって欲しい。

 

3年ぶりくらいに対面での哲学カフェを再開した。

会うということの、ただそれだけの無償のものの、美しさを知った。

 

 

日曜日

オフの日なのかオンの日なのか、わからないけど、

自分の読みたい小説が読めた日はオフのように感じる。

 

 

サッカーW杯が開幕する。

 

 

いままで自分がよく知らないままに渇望しつづけた、心の糧を手に入れる道が、やっとそこに示されたような心地がする。カフカ『変身』

 

 

【開催報告】哲学カフェ大分 11.19

 

 

2年9ヶ月ぶりに対面での哲学カフェを開催しました。

久しぶりに会えた方、オンライン以外で初めて対面した方など、

「会う」ことの重みをじっくりと感じながら、

「会うって必要?」をテーマにみなさんと哲学していきました。

 

 

会うことの大切さを認識しつつも、会うことの面倒さもあり、

会いたくない人こそ会わないといけないということも多く、

「会う」ことの本質が自分で選択できるものなのかという意見もありました。

 

・会わないと分からないことがある

・会って、その情報量の多さにごまかされること

・会うは英語ではsee。見ることにつながっている

・この場に来ているので、会うことは必要だと思っている

・恋愛や帰省など、会うこと自体が目的のこともある

・会うとは目を見て話すこと

・会うとは体温を感じること

・会わなくて、電話の声でその人の本質がわかることもある

・必要不要ではなく、会う人には会うべき時に会うのだ(縁起)

・会いたくない人と会う苦痛は避けられない(怨憎会苦)

・人の目で見るのとカメラの目(オンライン)

・首脳会談など意見が食い違うからこそ会って話す必要がある

 

 

・会っているのに会っていない感覚。会っていないけど会っている感覚

・会う 合う 遭う 逢う

・会うことは確認するため

・縁と確認

・必要と会いたいは違う

・会うことに意味を見出さなくてもいいのでは?

 

 

会うことはエネルギーを交換することという意見もあり、

私も久しぶりにみなさんとお会いしてとても元気になって、

エネルギーをもらえたような確かな感覚がありました。

 

 

ご参加ありがとうございました。

また来月も開催したいと思います。

お楽しみに。

 

 

その藍いろの影といっしょに 舞踏の範囲に高めよ

 

 

 

 

〔断章六より〕
衝動のようにさへ行はれる
すべての農業労働を
冷く透明な解析によって
その藍いろの影といっしょに
舞踏の範囲に高めよ

宮沢賢治「生徒諸君に寄せる」

 

 

 

 

2022.11.7-13

月曜日

新装したサッカーシューズでこどもたちとボールをひたすら蹴る。

蹴っても蹴っても飽きない、

光りがあり、風があって、そんななか永遠を感じる。

でも帰ってくると足が痛くて、疲れていた。

もっと体力、筋力をつけたい。

 

 

火曜日

「こども哲学の時間」を開催する。

テーマは「お互いを大切にするって、どういうこと?」

対話を通して、考え方が変わってくる。

人の見方も変わってくる。

とても大切な時間を共有した。

 

 

 

水曜日

オンラインで勉強を教えるというのは、隔靴掻痒。

なかなかもどかしい。

でも今の教育ビジネスはコロナ禍も相俟ってオンラインが伸びている。

大学ですら。

 

 

木曜日

こどもたちのフロー体験に感化を受ける。

記憶にも残らない没我こそが、その子が大人になったときに

大いなる「ささえ」となるのだろう。

わたしたちは、記憶にあるものより、記憶にないものによってできている。

でももう中学くらいになると、それも少なくなってくるようだ。

 

 

 

金曜日

畳替えの打ち合わせと計測。

こどもたちに新しい畳のい草の香りを嗅ぐきっかけになると嬉しい。

 

 

土曜日

朝から夕方まで哲学プラクティス連絡会に参加。

午前中はファシリテーション

午後からは学校でこども哲学を実践している人のプレゼンを聴く。

こども哲学や哲学対話、哲学カフェをもっと社会に浸透させたいとしたときに、

大事なのは組織的な運動なのか、それとも個の強さによってなのか。

 

 

日曜日

久しぶりに雨が降った。

皮膚にまとわりつく湿気がやさしかった。

 

 

明日のための予習。

本や物語が好きなこどもがさらにさらに好きになるために自分ができることを考える。

上からではなく、あくまで対等に、同じ目線で。

 

 

夜に花火が鳴る。

 

 

 

老人とサーニカとはふた手に別れて、羊の群れの両端に立った。二人とも棒のように立ちつくした —身じろぎもしないで、地面を見つめ、考えこみながら、老人のほうは幸福についての思いから逃れられなかったし、若者は若者で、夜ふけに聞かされたことを考えつづけていたからだ。自分には要りもせず、わかりもしない幸福そのものにはちっとも興味は湧かなかったが、人間の幸福というものの幻のような、おとぎばなしのような性質が彼には興味深かった。

『幸福』チェーホフ

 

 

 

 

 

 

 

「誰かのけがを祈らない」人になるために

 

 

 

 

ついにはありがたいことにまったく顔を見せなくなったころ、ヘイノ・ヴァンダージュースは視野の隅の方で、粗面積みの石壁と波打つニレの木の合間にきらきらと光る翼の付いた物体が見えたような気がしたことが一度か二度あった。そして奇妙なことに、それが一八九三年以来行方不明になっていた自分の魂なのかもしれないと思えてきたのだった。

 

T・ピンチョン

 

 

 

 

2022.10.31-11.6

月曜日

元信者の告白。

統一教会には愛がない」

 

 

 

火曜日

11月の始まり。

今年もあと2ヶ月。

 

 

 

水曜日

「光」という名前のついた人がずいぶん後年になって、

死ぬ間際の親父に自分の名前の由来を聞いた。

てっきり光り輝く人間になれという意味で付けたかと思っていたその人は、

死にゆく親父から周りの人を輝かせる人になってほしいからその名前にしたと聞いて、

強く動揺したという。

 

 

 

木曜日

文化の日

うれしい仕事の依頼。

自分のやりたいことと人の困りや社会が求めることが一致するというのは

単純にうれしいことだ。

 

でも芸術というのはそういうものとは一線を画す。

誰からの要請もなく、ただ自分の魂のもとめに応じて、動かされていく。

能動とも受動ともいい難い

 

畳替えの相談を業者にする。

 

 

ひるねした。

深い眠り。

夢は見ない。

入れ墨が趣味で全身墨の入っている人の見る夢に出てくる(私)は

入れ墨をしていない。人はどちらを生きているのだろう。

 

 

金曜日

サッカー日本代表に選ばれなかった大迫選手は補欠のメンバーに登録されることを

拒んだという。「誰かのけがを祈りたくない」と。

 

 

 

 

土曜日

気温がぐんと下がった。

温泉場では寒くなったねえが挨拶になる。

 

 

午前中は対話勉強会。

来週ワークショップを哲学プラクティス連絡会で開くため、

リハーサルをする。

 

 

秋の紅葉を見に、竹田まで足を伸ばす。

ななせダム、用作公園、大場清水湯カフェ、竹田市立図書館。

緑と赤の入り交じる風景も味わい深し。

竹田の図書館は相変わらずいい。

居心地良く、選書といい本の並びの「編集」が素晴らしい。

別府に新しくできる図書館はどのような空間を体験できるか楽しみである。

 

スポーツ用品店で子ども時分以来のサッカーシューズを買う。

夜は大戸屋の牡蠣フライ定食をたべた。美味でした。

 

 

日曜日

 

 

勤め人なんて一人のこらず、ぼろ屑みたいな人間ばっかりなのだろうか。たとえ朝の間の二、三時間くらい商会のために活用できなかったとしても、じつは良心の呵責をおぼえて気ちがいみたいになりながら、しかも、どうしてもベッドから離れられなかったような、そんな正直で誠実な人間はやつらの中には一人もいないというわけなのか。『変身』カフカ

 

 



 

哲学プラクティス連絡会のご案内 11.12

 

 

11月12日にオンラインで開催される哲学プラクティス連絡会のワークショップに、

ファシリテーターとして参加します。

テーマは「対話のあとのファシリテーターのふりかえり、どうしてますか?」です。

ファシリテーター経験者やそうでない方にも、興味のある方は参加してみてください。

このテーマは同時に、どのような哲学対話がよい哲学対話なのかを考えるきっかけに

なるはずです。

 

この日はその他にも様々な魅力的なプログラムが組まれていますので、

ぜひ興味のあるものを見つけたら参加されるといいと思います。

以下事務局の案内文です。

 

 

***

哲学プラクティス連絡会第8回大会につきまして、一般参加の申込受付をしています。

今、これをご覧になっているあなたには、どんな「哲学プラクティス」との出会いがあったのでしょうか。哲学プラクティスの道をもう歩いているのでしょうか。それとも、扉を見つけたばかりでしょうか。

この大会で報告される様々な活動や取り組みは、まさに今、哲学プラクティスの道を歩いている人たちの豊かなストーリーです。この大会を通してその物語を分かち合い、人々や問いが繋がり合うきっかけとなれば、と願っています。

もうすでに哲学と出会っている方も、これから出会おうとしている方も。

大会委員一同、みなさまのご参加をお待ちしています。

参加を希望される方は、下記Peatixのページからチケットを購入してください。また、発表者の方もチケットのご購入をお願いいたします。チケットご購入後、当日のZoomミーティングルームのURLをお送りします。

◆開催概要 
・日時:2022年11月12日(土)9:30~18:00
・開催方法:オンラインテレビ会議システム(Zoom、Spatial Chat)を利用
・タイムテーブルはこちら:

Timetable(1101).pdf - Google ドライブ


・プログラム集はこちら:

program.pdf - Google ドライブ



◆第8回大会 チケット価格
・一般 2,000円
・学生 500円
・高校生以下および事情のある方 無料

 

◆お申し込みはこちら

https://peatix.com/event/3380801/view

 

 

 

 

 

【開催案内】第七十八回 別府鉄輪朝読書ノ会

 

 

 

私の座席の窓は曇らない。

 

内田百閒『第二阿房列車

 

 

 

 

 

 

 

十一月の別府鉄輪朝読書ノ会の案内です。

 

今年は鉄道開業150周年とのこと。十一月はレールの繋ぎ目が刻む音を愛する究極の鉄ちゃん、内田百閒の『第二阿房列車』(新潮文庫を読んでいきます。第一阿房列車ではなく、第二ですのでお間違えのないよう!ちなみにむすびの店主の河野さんも鉄ちゃんみたいです。


内容(「BOOK」データベースより)
人生は用のない旅。阿房列車はチンタラ走る。
窮極の「テツ本」、読書界の話題をさらった名著を新字新かな遣いで復刊。

ただ列車に乗るだけのための百閒先生の旅は続く。「汽車が走ったから遠くまで行き著き、又こっちへ走ったから、それに乗っていた私が帰って来ただけの事で、面白い話の種なんかない」。
台風で交通が寸断する九州では、なぜか先生と弟子の「ヒマラヤ山系」が乗る汽車だけはちゃんと走り「無事に予定通りに行動しているのが、相済まぬ」。悠揚迫らざるユーモアに満ちた、シリーズ第二弾。付録・鉄道唱歌第一集、第二集。


○課題図書:『第二阿房列車』内田百閒(新潮文庫
○日 時:11月27日(日)10:00-12:00
○場 所:別府市鉄輪ここちカフェむすびの
ファシリテーター:シミズ
○参加費:¥1,200円(運営費、むすびのさん特製の軽食、ドリンク代含む)
○定 員:12名程度(要事前申し込み、先着順)
○備 考:課題本を事前に読んで参加してください。
      11/24木までにお申込みください。