一方の手の指で永遠に触れ、一方の手の指で人生に触れることは不可能である。
今年明けて初めての別府鉄輪朝読書ノ会を開催しました。
三十歳の頃に書いた作品です。
観念と現実とを行き来しつつ、観念の世界をとった主人公溝口に凄みを感じるのか、キモさを感じるのか。一方で自身の障がいをロジカルに乗り越えていく柏木の方に女性人気がありました。
永遠に追いつけない世界とのズレ、遅れを吃音プラス〈三月生まれの宿命〉として解釈した意見には興味深いものがありました。現代哲学における、自分が何者かを同定する場合には、常に先んじる他者を必要とする〈差延〉という概念を思い出しました。
参加者のみなさんの多様な意見を聞くことで、作品が多面的に立体的に浮き上がってきました。金閣寺の近所に住まれていた方のリアルな地理的なお話は作品理解に参考になりましたね。ご参加ありがとうございました。
今回、作品から着想を得たむすびのさんの特製メニューは、
金柑、金木犀、金平牛蒡、金山寺味噌、金団、金時人参、金時豆、金胡麻、
最後にフンドーキン!と「金」尽くしでした。こうきましたか!
たいへん美味しくいただきました。ありがとうございました。
次回2月は『蟹工船・党生活者』小林多喜二(新潮文庫)を読んでいきます。