対話と人と読書|別府フリースクールうかりゆハウス

別府市鉄輪でフリースクールを運営しています。また「こども哲学の時間」など

【開催報告】第十七回 別府鉄輪朝読書ノ会

 

八月の別府鉄輪朝読書ノ会を開催しました。主催者のシミズです。八月の課題図書は大岡昇平の『野火』をとりあげて、みなさんと対話しました。

学校などで戦争反対のメッセージとして紹介されたりすることの多いこの作品ですが、実際読んでみると、ただ事実の集積があるだけで、むしろ神の問題や食物連鎖のことなどが大きなテーマになっていることがわかります。私も高校生のとき以来の再読でしたが、印象がまったく違っていました。

遠藤周作の『沈黙』において主人公が転ぶことの極限状態のなかで個人的な神を発見するように、この作品でも戦争という極限状態を通して独自の神を発見する過程が描かれているという話がありました。

 

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今回むすびのさんから提供されましたデザートは、フィリピンで食べられているアボガドコーンイエローというもの。冷たくて美味しかったです。

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作品中、鶏が多く出てくることもあり、鳥肉を中心としたお料理が提供されました。スープも鶏皮の出汁が効いていて美味しかったです。そして芋ですね。

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参加していただいたみなさま、ありがとうございました。八月は毎年、戦争に関するものをとりあげたいと思っていて、今回『野火』について、みなさんと行きつ戻りつしながら、じっくりと考えられられたのは大きな収穫でした。戦時中の飢えについて考えると、なおさら食事の有り難さが身に沁みます。

 

次回、九月は皆川博子の『少女外道』をとりあげます。お楽しみに。

 

 

【開催案内】第十七回 別府鉄輪朝読書ノ会

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八月の別府鉄輪朝読書ノ会の案内をします。

八月は戦争について考えたく、塚本晋也監督によって映画化もされた

大岡昇平の『野火』を課題図書とします。

 

内容紹介(「BOOKデータベース」より)

敗北が決定的となったフィリッピン戦線で結核に冒され、わずか数本の芋を渡されて本隊を追放された田村一等兵。野火の燃えひろがる原野を彷徨う田村は、極度の飢えに襲われ、自分の血を吸った蛭まで食べたあげく、友軍の屍体に目を向ける……。平凡な一人の中年男の異常な戦争体験をもとにして、彼がなぜ人肉嗜食に踏み切れなかったかをたどる戦争文学の代表的名作である。

 

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

大岡/昇平
1909‐1988。東京生れ。京都帝大仏文科卒。帝国酸素、川崎重工業などに勤務。1944(昭和19)年、召集されてフィリピンのミンドロ島に赴くが、翌年米軍の俘虜となり、レイテ島収容所に送られる。’49年、戦場の経験を書いた『俘虜記』で第1回横光利一賞を受け、これが文学的出発となる。小説家としての活動は多岐にわたり、代表作に『野火』(読売文学賞)『レイテ戦記』(毎日芸術大賞)などがある。’71年、芸術院会員に選ばれたが辞退(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

 

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第十七回 別府鉄輪朝読書ノ会

課題図書:『野火』大岡昇平新潮文庫

とき:2017年8月20日(日)10時より

ところ:別府鉄輪ここちカフェむすびの

 

参加希望の方は以下のホームページよりお申込みください。

ホーム - 大分・別府鉄輪朝読書ノ会

 

【開催報告】第十六回 別府鉄輪朝読書ノ会

 

第十六回の別府鉄輪朝読書ノ会を開催しました。主催者のシミズです。今回は別府市で老舗のお味噌屋さんを営む坂本長平商店の坂本さんに写真を撮っていただきました。坂本さんは各地で写真の作品展を開かれています。ありがとうございました。

 

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今回の課題図書は川端康成の『みずうみ』でした。話がとびとびで混乱した、理解できなかった、著者の観察眼の鋭さに驚いた、その変態ぶりにに川端康成のイメージが変わった、登場人物が全員変、意識の赴くままに場面が転換するこの感じはデイヴィッド・リンチの映画に似ている、川端の美少女コレクション、太宰が健全に感じる、川端のシャレのならなさ、などなど思い思いの感想を語っていただきました。

 

川端の変態についての解釈(尾行とストーカーは違う。距離が大事)や様々に入り組んだ連関的な要素(湯―みずうみー貸しボウトー蛍―水木)、宮子が子宮に読める、宮沢賢治と逆のベクトル、銀平の抱える存在論的な〈かなしみ〉についてなど、さまざまな読みが展開されていきました。作者の思惑を超えた無意識を呼び込む書き方に楽しく翻弄されつつも、人間の暗部を直視するそのまなざしにゾッとする、共感ができる人、できない人、ここまで書いていいのかと思う描写の数々に言葉を失う、そんな作品でした。

 

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新潮文庫の裏表紙に書かれた紹介文。改訂前(手前)と改訂後(後)で違います。

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むすびのの店主河野さんから牛蒡茶の紹介。ごぼう花言葉は〈私にさわらないで〉とのこと。

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田中さんから今回の作品にインスピレーションを受けてつくったギョロッケ・バーガーの紹介です。川端康成のギョロギョロした目で相手を見つめるエピソードから聯想とは!

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たいへん美味しくいただきました。ありがとうございました。

 

次回8月は20日開催です。課題図書は戦争について考えたく、大岡昇平の『野火』(新潮文庫)をとりあげます。ご関心ある方はホームページよりお申込みください。

 

ホーム - 大分・別府鉄輪朝読書ノ会

 

 

 

 

 

 

【開催案内】第十六回 別府鉄輪朝読書ノ会

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第十六回目の別府鉄輪朝読書ノ会の案内です。

七月は川端康成の『みずうみ』をみなさんと読んで行きたいと思います。

 

 

内容紹介

美しい少女を見ると、憑かれたように後をつけてしまう男、桃井銀平。教え子と恋愛事件を起こして教職の座を失ってもなお、異常な執着は消えることを知らない。つけられることに快感を覚える女の魔性と、罪悪の意識のない男の欲望の交差――現代でいうストーカーを扱った異色の変態小説でありながら、ノーベル賞作家ならではの圧倒的筆力により共感すら呼び起こす不朽の名作である。

 

 

参加希望の方はホームページよりお申込みください。

参加のお申込み - 大分・別府鉄輪朝読書ノ会

 

 

 

【開催報告】第十五回 別府鉄輪朝読書ノ会

第十五回目の別府鉄輪朝読書ノ会を開催しました。朝は大雨が降っていましたが、開催時には晴れてきて安心しました。

 

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今回は安部公房の『砂の女』をみなさんと読んでいきました。作品の知名度でしょうか、いつもより倍以上の参加者が集まりました。ありがとうございました。

 

口の中が渇いてくる、皮膚がヒリヒリする、砂のざらざら感がする、汗ばんだ不快感があるといった身体的な反応が読んでいる間や読後に訪れるという感想が多く聞かれたり、登場人物や世界観の不気味さに対する嫌悪感こそが、多くの人を惹き付ける源ではないのかという意見もありました。物語の構想力、人物設定、舞台設定、広範な知識と文体が完璧な調和をなして作品をつくりあげている。この引きずり込まれる感覚は男性が結婚生活や仕事にもっているイメージなのではないか。労働の為の労働とは現代の労働観を象徴している。男は環境そのものを変えようとする、女は環境を当然なものとして受け入れる。男は望んで穴ぐらに入り込んだのだ。忘れられたい欲望、存在証明を消したい欲望。などなど、みなさんのさまざまな読みが聞かれました。

 

 

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今回むすびのさんから提供された料理は、サンドカラーで統一された!地獄蒸しの卵と奈良漬をはさんだパンにハモのすり身の玄米おむすびでした。美味しかったです。

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コーヒースムージーは見た目も砂っぽく、そして食感も見事じゃりじゃりしていました!

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むすびの田中さんから、料理の説明がありました。

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Mさんの付箋…。ここまで読み込まずともお気軽にご参加くださーい。

 

今回が理系の変人が書いた小説なら、次回は文系の変態、川端康成の『みずうみ』をみなさんと読んでいきたいと思います。7月23日(土)10時よりここちカフェむすびのさんにて開催します。ご興味のある方、ご参加ください。

 

お申し込みはホームページよりお願いします。

ホーム - 大分・別府鉄輪朝読書ノ会

 

 

 

 

 

 

 

【開催案内】第十五回 別府鉄輪朝読書ノ会

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第十五回目の別府鉄輪朝読書ノ会は安部公房砂の女』(新潮文庫)をとりあげます。

 

 内容(「BOOK」データベースより)
砂丘へ昆虫採集に出かけた男が、砂穴の底に埋もれていく一軒家に閉じ込められる。考えつく限りの方法で脱出を試みる男。家を守るために、男を穴の中にひきとめておこうとする女。そして、穴の上から男の逃亡を妨害し、二人の生活を眺める部落の人々。ドキュメンタルな手法、サスペンスあふれる展開のなかに、人間存在の象徴的な姿を追求した書き下ろし長編。20数ヶ国語に翻訳された名作。

 

とき:2017年6月25日(日)午前10時~12時

ところ:別府鉄輪ここちカフェむすびの

 

ご関心ある方はホームページよりお申込みください。

ホーム - 大分・別府鉄輪朝読書ノ会

 

 

 

【開催報告】第十四回 別府鉄輪朝読書ノ会

第十四回目の別府鉄輪朝読書ノ会を開催しました。今回の課題本、メキシコの作家フアン・ルルフォの『ペドロ・パラモ』をみなさんと読んでいきました。

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短い作品に多すぎる登場人物、生きている者と死んだ者が語らい、過去と現在が交錯する70の断片からなるこの小説は一度読んだだけではわからないものの、わかる、わからないを超えた豊かな混乱を読書体験として味わう。みなさんの読みを持ち寄りながら、遠いメキシコの荒野の乾いた風がこの温泉地鉄輪にも吹き抜けたような思いがしました。

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場面ごとに登場人物をまとめて作表してきた方がいました!

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メキシコということで、むすびのさんからはクミンシードの効いたチリコンカンやとうもろこしの粉を使ったスープなどが提供されました。辛かったですが、美味しかったです。

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ご参加ありがとうございました。次回、6月は阿部公房の『砂の女』を読んでいきます。