対話と人と読書|別府フリースクールうかりゆハウス

別府市鉄輪でフリースクールを運営しています。また「こども哲学の時間」など

【開催報告】第五十三回 別府鉄輪朝読書ノ会 9.27

 

 

 

この家には、悪はありません。

眠れる美女川端康成

 

 

 

九月も末の朝は涼風というか肌寒いような風が吹くなか、

五十三回目の別府鉄輪朝読書ノ会を開催しました。

 

今回の課題図書は『眠れる美女川端康成をみなさんと読んでいきました。

ガチの変態小説と銘打ったのが功を奏したのか、参加者がいつもより倍近く

しかも女性の多く、対話の熱量の高い神回となりました。

 

また今回は大分合同新聞社さんの取材を受けました。記事になるといいですね。

 

 

 

対話の内容については一部ですが、印象に残ったものを以下箇条書きで振り返ります。

(ネタバレ含みます)

 

・冒頭からわしづかみにされた

・冒頭を読んで、買った本を間違えたのかと思った。

・怖さもあり、魅力もある。読んでいてドキドキした。

・初めて読んだ。素晴らしかった。変態小説ではないと思う。

・ファンタジーだけどリアル。

・匂いの描写、そこからくる想起

・違和感があった。分かるところと分からないところがあった。

・読みやすい。句読点の打つところが秀逸

・屍体愛好者?執拗な表現。孤独感。他者を媒介して自分を見ている

・下品じゃない。上品なエロ。絶妙な設定。

・この人は普段こんなことを考えているの?

・観察の鋭さ。普段絶対に読まない本を薦めてくれてありがとう。

・暴力を振るってしまいたいという欲望に最後共感できた

・女だけど共感する。美しいものに触れていたい、触れられる喜び

 生まれてきた意味を知る

・男として終わっていないは自称w

・気持ち悪かった。彼氏には読ませたくない。

・一番元気そうな子が死ぬ

・赤子から少女から、母から、老人まで輪廻転生のような循環がある

・性の記憶、肉親も他人も混じり合って溶けている

・ここに嘘は書いていないと思う

・男が生きるということは「悪」と背中合わせということ。避けて通れない

 そういうのを描いた小説ではないのか。

・女も同じ

・二番目の娘がタイプだけど、きむすめってどうやって分かったん?

・自分の手が褒められたときに自分の腕に嫉妬した

 

 

 

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むすびの店長河野さんからは、川端康成氏のノーベル賞にちなんで、

スウェーデンの料理を準備していただきました。美味しかったです。

 



ご参加ありがとうございました。

十月は私小説の金字塔『赤目四十八瀧心中未遂車谷長吉を読んでいきます。

 

 

【開催報告】オン哲!9.20(オンライン哲学カフェ)

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オン哲!(2次会のようす Zoom画面)

 

 

オン哲!9.20を開催しました。

今回は「死にたい人に手を貸すことはいけないことか?」をテーマに

みなさんと対話しました。

 

 

対話に入る前にみなさんの考えを聞いてみました。

認める派、認めない派、条件付きで認める派、

認める派が多いことに驚く、そう考えるみなさんの背景を知りたい、

自分の命を自由にできない社会、でも死刑制度はあることの一貫性のなさ、

コロナを機に死生観について考えた、その延長上でこのテーマについて考えたい、

自分の死生観を人に共用(強要?)できるのか、

善悪に興味はなく損得で考えたい、命の価値も相場のように変動している、

なぜ家族に負担がいくような社会が温存されているのか、、等々

 

 

 

以下対話内容を箇条書きに列挙します。(全てではありません)

 

・自分の死と他者の死の決定的な違い(他者は死なない?)

・火葬のボタンを押すのが嫌だった感覚を忘れない

・チューブにつながれていても体温がある状態が続いて欲しい

・どこまでが「生」なのか。自分の意思が達成できる状態にあることが「生」

・最後まで〈生きる〉ということに注力することが大切ではないのか

・生きるべきが強い社会の生きづらさ

・生きることを強いられる社会とは

・トロッコ問題(人の生き死の決定には関わりたくない)

・補助線として「自殺を認めるかどうか」を問うのはどうか

・「今日は死ぬのにもってこいの日だ」ネイティブ・アメリカンの言葉

・生き続ける理由を考えたい

・生きるべきが先行すると、逆に死にたくなる

・死にたいという人になんという言葉をかければいいのか、

 なにを為せばいいのか教えて欲しい

・まずは話を聴くことから始めたい

・言葉よりも手を握るなど体温を感じることで踏みとどまるものがある

・人が生死を決めるのは感覚的に良くないことのように思う。

 触れてはいけないものであるような、本能に根ざしたもの。

・生き続けることが嫌だというのと死にたいは別

希死念慮(死にたいと思っている「私」は治療の対象となる)

・肉体的苦痛を避けるための安楽死を認めるか否かなの話しはなかった

・肉体と精神は不可分につながっているのではないか

 

 

断言もあれば、その語りがたさを前に言葉を探す沈黙もあり、

それぞれの生きてきた背景が滲んでくるような忘れがたい回でした。

私も含めて具体的な事例や体験、本や映画が多く参照されたのも

今回の対話の特徴でした。

 

具体と抽象を往き来するところ、具体に寄りすぎたかなと反省もあります。

最後に肉体的苦痛(精神的苦痛との違いとは?)への回避としての

安楽死の是非についての対話も中途半端に終わりました。

また次回以降のトピックとしたいと思います。

 

 

ご参加ありがとうございました。

デスカフェではありませんが、この哲学カフェでは日常話しづらい?

死や死生観に触れたテーマを扱うことがあります。次回もお楽しみに。

以下参加者のみなさんからあげられた参照を一部ですがリンクします。

 

 

***

京都ALS殺人事件についての座談会

https://www.youtube.com/watch?v=Ib6FkAbHZ9k

https://www.youtube.com/watch?v=jVN7yhcSFG4

 

こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち (文春文庫 わ) | 渡辺 一史 |本 | 通販 | Amazon

 

夜と霧 新版 | ヴィクトール・E・フランクル, 池田 香代子 |本 | 通販 | Amazon

 

安楽死を遂げるまで」宮下洋一

https://www.amazon.co.jp/%E5%AE%89%E6%A5%BD%E6%AD%BB%E3%82%92%E9%81%82%E3%81%92%E3%82%8B%E3%81%BE%E3%81%A7-%E5%AE%AE%E4%B8%8B-%E6%B4%8B%E4%B8%80/dp/4093897751/ref=sr_1_2?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&crid=3L6P8M32QV4ZI&dchild=1&keywords=%E5%AE%89%E6%A5%BD%E6%AD%BB%E3%82%92%E9%81%82%E3%81%92%E3%82%8B%E3%81%BE%E3%81%A7&qid=1600650058&sprefix=%E5%AE%89%E6%A5%BD%E6%AD%BB%E3%82%92%2Caps%2C360&sr=8-2

 

「死を求める人びと」ベルト・カイゼル

https://www.amazon.co.jp/%E6%AD%BB%E3%82%92%E6%B1%82%E3%82%81%E3%82%8B%E4%BA%BA%E3%81%B3%E3%81%A8-%E3%83%99%E3%83%AB%E3%83%88-%E3%82%AB%E3%82%A4%E3%82%BC%E3%83%AB/dp/489456131X/ref=sr_1_1?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&dchild=1&keywords=%E6%AD%BB%E3%82%92%E6%B1%82%E3%82%81%E3%82%8B%E4%BA%BA%E3%80%85&qid=1600650166&sr=8-1

 

自死という生き方 (双葉新書) | 須原 一秀 |本 | 通販 | Amazon

 

思い通りの死に方 (幻冬舎新書) | 中村 仁一, 久坂部 羊 |本 | 通販 | Amazon

 

映画「海を飛ぶ夢

https://www.amazon.co.jp/%E6%B5%B7%E3%82%92%E9%A3%9B%E3%81%B6%E5%A4%A2-DVD-%E3%83%8F%E3%83%93%E3%82%A8%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%90%E3%83%AB%E3%83%87%E3%83%A0/dp/B000A6DLBE/ref=sr_1_1?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&crid=2AM33GGS52B0S&dchild=1&keywords=%E6%B5%B7%E3%82%92%E9%A3%9B%E3%81%B6%E5%A4%A2&qid=1600650346&sprefix=%E6%B5%B7%E3%82%92%E9%A3%9B%E3%81%B6%2Caps%2C349&sr=8-1

 

書かずに死ねるか 難治がんの記者がそれでも伝えたいこと | 野上 祐 |本 | 通販 | Amazon

 

マンガ社会学入門【1】いま、問われる「安楽死」――『ブラック・ジャック』で語られた「生と死」

 

「ひとりの覚悟」山折哲雄

https://www.amazon.co.jp/gp/product/459116134X/ref=ppx_yo_dt_b_asin_title_o00_s00?ie=UTF8&psc=1

 

 

 

【開催案内】オン哲!9.20(オンライン哲学カフェ)

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最近医師による嘱託殺人の事件がありましたが、目の前に死にたいという人がいた場合、みなさんはどうしますか?本人の意思は問わずに強制的に生きさせて介入・干渉・支援するパターナリズムという言葉もあります。生命と尊厳、自己決定など、この機会にじっくり考えてみませんか?
 
 
○テーマ:「死にたい人に手を貸すことはいけないことか」
○日 時:9月20日(日)20:00-22:00 
○場 所:各自パソコン(カメラ・マイク付属もしくは内蔵)の前へ(原則デスクトップかノートブックパソコンにて参加してください。)  ※ ipadスマホでの参加は構いませんが、全員の顔が同時に見れないので不自由さがあるかと思います。 
○方 法:Zoomを使用します。
○参加費:300円*paypayでお支払いください
 
○定 員:約15名程度(要事前申し込み、先着順)
○備 考:開催前日までにホームページよりお申込みください。
 

八月も終わるよ。

 

 

夏休みなど、コロナの影響で外に出ることも少なく、

鉄輪近辺を用もなくぶらぶらしていたら、この町の”よさ”が深く染み入ったようだ。

 

この町は優しいことに気づいた。

それは町の弱さからくる優しさだ。

弱さというのは、激しさ、派手さ、自己主張の反対にあるもの。

 

そうだ自分はある時期から強いものが嫌いになっていた。

人でも土地でも。

 

日暮れどき、長く引き伸ばされた時間の

暑さも極からゆっくりとさがっていく、誰もいない裏路地の小径を歩くときなど、

ふつふつとこの町にいることの至福を感じた。

要するにフィットして居心地がいいということだろう。

 

終の棲家というのか、今までいろんなところに住んできて、

そういう場所が見つかったというのは、なかなかのことではないか。

 

歩いているだけで幸福感が滲み出てくる町ということで、

意味もなく歩くためだけに歩く。 

人生に意味は必要ないと、このときだけは思えるのだった。

 

関係ないけど、女の人のお団子ヘアが好きだなと思う。

夏のこの時期にしか見れないような気もする。

と言いつつ女性に限らず、男性でもたとえばリバプールのファン・ダイクなんかの

結んだ髪型も好きだから、なんかこう髪が後ろに引っ張られている感じが

好きなのかもしれない。それがなぜなのかは分からない。

八月が終わって、九月が来る。

安倍政権も終わった。なぞの抑圧感が一瞬消えたような気がした。

 

 

 

 

 

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【開催案内】別府鉄輪朝読書ノ会 9.27『眠れる美女』川端康成

 

 

 

 

秘仏と寝るようだ。」

眠れる美女

 

 

 

 「私のいつも孤独の部屋であるが、孤独ということは、なにかがいることではないのか」

『片腕』

 

 

 

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眠れる美女・片腕・散りぬるを(新潮文庫

 


九月の別府鉄輪朝読書ノ会は気分を変えて変態小説を読んでいきたいと思います。
 
川端康成眠れる美女』(新潮文庫)他同収録の『片腕』『散りぬるを』をとりあげます。
 
 
 
内容紹介 (「MARC」データベースより)
波の音高い海辺の宿は、すでに男ではなくなった老人たちのための逸楽の館であった。真紅のビロードのカーテンをめぐらせた一室に、前後不覚に眠らされた裸形の若い女その傍らで一夜を過す老人の眠は、みずみずしい娘の肉体を透して、訪れつつある死の相を凝視している。熟れすぎた果実の腐臭に似た芳香を放つデカダンス文学の名作『眠れる美女』のほか二編。  
 
 
 
 
○課題図書:眠れる美女川端康成新潮文庫
○日 時:9月27日(日)10:00-12:00 
○場 所:別府市鉄輪ここちカフェむすびの
○参加費:¥1,200円(運営費、むすびのさん特製の軽食、ドリンク代含む)
 
○定 員:7名程度(要事前申し込み、先着順)
○備 考:課題本を事前に読んで参加してください。
      9/24木までにお申込みください。
 
 
 

【開催報告】オン哲!8.15(オンライン哲学カフェ)

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お盆、夕暮れの別府湾



 

オンラインでの哲学カフェを開催しました。

 

今回は気分を変えてテーマを特に設けずに、

参加者の中から話したいものを私が任意でチョイスするスタイルでいきました。

 

8月15日のお盆の時期に開催したこともあって、

”お盆”について考えてみたいという方が複数いらっしゃったので、

テーマをひとまず「お盆」として対話を始めました。

 

お盆のこの時期が好きという話から、伝統について、宗教無宗教について、

お墓や樹木葬などの埋葬について、ムラなどの共同体について語るうちに、

都会の新興住宅などに住む、地縁のないまたは地縁を失った

〈フワフワ〉した人たちについて問い考える時間が多くなりました。

天皇ってフワフワしている、というのはハッとさせられました。

 

地縁社会に属することのメリットとデメリットを考えつつ、

伝統とノマドの両方のいいとこ取りができればといった意見もありました。

 

テーマをフリーにすると、予想外の展開になりやすく、新鮮な感じがしました。

また試みてみたいと思います。ご参加ありがとうございました。

 

 

 

 

 

【開催報告】第五十二回 別府鉄輪朝読書ノ会 8.23『火垂るの墓』

 

 

暮れるにしたがって、風のたび低くうなりながら木炭は赤い色をゆらめかせ、夕空には星、そして見下せば、二日前から灯火管制のとけた谷あいの家並み、ちらほらなつかしい明りがみえて、四年前、父の従弟の結婚について、候補者の身もと調べるためこのあたりを母と歩き、遠くあの未亡人の家をながめた記憶と、いささかもかわるところはない。

 

火垂るの墓野坂昭如新潮文庫

 

 

 

別府鉄輪朝読書ノ会を開催しました。

今回とりあげた作品は野坂昭如火垂るの墓』。

映画は有名ですが案外原作は読まれていない方も多く、

映画では表現できない小説固有なものなど語り合いました。

今年は終戦から75年目の年。

忘れられていく戦争体験に抗い、日本には優れた戦争文学がたくさんあり、

毎年八月はそんな作品を読むようにしています。

直視したくない戦争体験を、それぞれの作家が悔恨や書くことの後ろめたさの

滲ませそれぞれの文体で書いた作品を今読むことの意義は大きいと思います。

 

 

 

 

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アメリカひじき=紅茶です。

 

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むすびのさん特製のメニューは、『アメリカひじき』にちなんで

ひじきづくし!の料理でした。美味しかったです。

 

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暑いなか、ご参加ありがとうございました。

九月は川端康成眠れる美女』を課題図書に読んでいきます。