対話と人と読書|別府フリースクールうかりゆハウス

別府市鉄輪でフリースクールを運営しています。また「こども哲学の時間」など

夏の塩切れ

 

 



 

最近無気力がちで口内炎がよくできて何処かしらに不調を感じていた。二つの大きな哲学対話のファシリテーションで燃え尽きたのかとも考えていたのだが、循環農法の赤峰勝人さんが何度も口にする「塩切れ」という言葉を思い出して、自然塩を意識的に舐めたり、ご飯にかけたりするうちに少しずつ元気、元氣を取り戻していった。夏バテというのは、なにも激しく屋外で灼熱に晒される日日を送らずとも、ただ夏であるというだけで変調をきたす何ものかなのだろう。大岡昇平『野火』は細かく章立てられていて、第十九章は「塩」というタイトルがつけられている。田村一等兵はジャングルを彷徨するなか偶然塩の塊を見つけて助かる。その後この塩をなめながら生き残っていく。強靱さを発揮できたのは、塩のおかげだろうとも読める。

 

 

 

 

彼等は声を合わせて笑ったが、上等兵は私の雑嚢に目をとめた。

「何だ、そりゃ。やにふくらんでるじゃねえか」

「塩であります」

「塩?」

歓声に似た声が、一斉に三人の口から洩れた。

(中略)

彼等は争うように私の雑嚢へ手を入れると、一つまみずつ頬張った。

「うめえ」

 

『野火』大岡昇平

 

 

 

旅先で自然塩が売っていたりすると買う。昔奥能登を旅したときに買った揚げ浜式で作られる塩と赤峰さんお薦めの佐伯間越の海で作られる、なずなの塩を好んで食べている。夏にスイカやトマト、キュウリを食べるのは、むしろ塩を体内に採り入れるためではなかろうか。夏の塩切れに注意。でももう風にはかすかに秋を感じる爽やかがのっている。