対話と人と読書|別府フリースクールうかりゆハウス

別府市鉄輪でフリースクールを運営しています。また「こども哲学の時間」など

【開催案内】第六回別府鉄輪朝読書ノ会

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こんにちは。

九月の別府鉄輪朝読書ノ会の案内をします。

課題図書は川上未映子さんの『ヘヴン』(講談社文庫)をとりあげます。

 

最近も殺人事件に至ったケースもありましたが、テーマは「いじめ」です。

それまでの作風から大きく転換し直球勝負で挑んだ、

川上未映子さんが作家として大きく飛躍した作品です。

なぜいじめはなくならないのか、善とは悪とは、

哲学的問答を繰り返しながら、各々の世界を獲得していく、

青春残酷物語です。

ご関心ありましたら、ホームページより参加申し込みしてみてください。

参加のお申込み - 別府鉄輪朝読書ノ会

 

とき:9月25日(日)10時から12時

ところ:ここちカフェむすびの2階

 

 

【開催報告】第五回 別府鉄輪朝読書ノ会

第五回目の別府鉄輪朝読書ノ会を開催しました。

今回は八月ということもあり課題本は原民喜の『夏の花』をとりあげました。

暑い中でしたがご参加いただき、それぞれの思いを聴くことができました。

観察眼の鋭さ、人間の本能、嗅覚、文章がきれい、独特で読みにくい、

抽象的なのか具象的なのかわからない、日常の中に原爆がやってくる感じ、

語りがたい事象を語る言語の限界に挑んでいる、旧字体の迫力、

一文一文を味わい尽くしたいような、

悲惨さを訴えるだけの戦争文学とは一線を画している等々。

原民喜は大文字の歴史に流されることなく、

あくまで一個人として原爆体験を表現し得たことに

その普遍性、世界文学に足るものがあるのだろうと思いました。

 

後輩でもあり『永遠のみどり』に出てくるEこと遠藤周作の言葉を引用します。

原民喜さんの『夏の花』は、戦後いくつも書かれた広島原爆の日を語る作品のなかで、最高のものである。そこには大声も大きな身ぶりもない。そこにあるのはその日を体験して、大きな哀しい眼で全てを目撃した語り手の声である。」(ぐうたら交遊録)

 

対話の中でたびたび言及されました遺書をリンクします。

原民喜 遺書

 

また、おいの時彦さん(81)への インタビューもリンクしますので、ご関心のある方は読んでみてください。

戦後71年:原爆を描いた作家・原民喜の祈りと黙契 広島に住むおいの原時彦さんに聞く : 文化 : クリスチャントゥデイ

 

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今回もむすびのさんの特製メニューです。地きゅうりのヨーグルト和えや、奥部鍼灸院の奥部さんからいただいた大きなオクラのカレーなど美味しくいただきました。

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夏の花を代表するイチジクのコンポートも美味しかったです。イチジクには実がなくて食用としているのは花の部分だそうです。そういえば、漢字で無花果と書きますね。

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最後にみなさんで記念撮影。

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いつも詳細に調べて参加されているMさんのノートです。作品理解の助けになりました。付箋がすごい!!

 

今後とも別府鉄輪朝読書ノ会は月1回日曜日の午前中に開催します。

次回は9月25日。川上未映子の『ヘヴン』(講談社文庫)をとりあげます。

ご関心のある方はホームページよりお申込みください。

参加のお申込み - 別府鉄輪朝読書ノ会

 

 

【開催案内】 8/21(日)『夏の花』 原民喜

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現代日本文学史上もっとも美しい散文で、人類はじめての原爆体験を描き、朝鮮戦争勃発のさ中に自殺して逝った原民喜の代表的作品集。被爆の前年に亡くなった妻への哀悼と終末への予感をみなぎらせた『美しき死の岸に』の作品群、被爆直後の終末的世界を、その数カ月後に正確な筆致で描出した『夏の花』三部作、さらに絶筆『心願の国』『鎮魂歌』などを収録する。大江健三郎編・解説 

 

暑い日が続いていますが、いかがお過ごしでしょうか。

八月の会は、戦争に関する文学にしたいなと以前から考えていて、

今回は原民喜の『夏の花』をとりあげます。

毎年八月になると太平洋戦争のことを思うのですが、

今年はアメリカ大統領として初めてオバマさんが広島を訪問したこともあり、

原爆に関する小説を選んでみたのでした。

私は戦争文学でただ悲惨さや平和を訴える作品と言うのが苦手なのですが、

この作品には世界文学たりうる別の磁力が渦巻いていて、

それが何なのかを、みなさんとお話しできればいいなと思っています。

 ご関心のある方、ぜひ参加してみてください。

 

8月21日(日)10時より 別府鉄輪ここちカフェむすびのさんにて

第五回目の別府鉄輪朝読書ノ会を開催します。

お申し込みはホームページよりお願いします。

参加のお申込み - 別府鉄輪朝読書ノ会

 

【開催報告】第四回 別府鉄輪朝読書ノ会

第四回目の別府鉄輪朝読書ノ会を開催いたしました。

お暑い中、12名の方にご参加いただきました。

別府周辺からも多くの初参加者の方がみえられて嬉しかったです。

 

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今回とりあげた作品は太宰治の『グッド・バイ』です。

新潮文庫のものは戦後の短編作品がまとめておさめられており、

それらも課題図書の対象としました。

全体的な感想としては、教科書で読んだ『走れメロス』とは全く違う印象だった、

女性のことがよく分かっている作家、純粋、真面目、憎めない、

今読んでも新しい、ユーモア感覚のレベルの高さ、自分を突き放して見ている、

良い印象を持っていなかったが今回『グッド・バイ』を読んで好きになった、

声を出して大笑いした、などなど「太宰治」の世間一般にあるイメージが

今回覆った方も多かったのではと思います。

戦禍のただ中にいても太宰には不思議な明るさのようなものがあり、

それは疎開によってそれまでの人間関係のしがらみから解放され、

家族と向き合えてシンプルになれたのではという意見が印象に残りました。

 

眉山』には〈微醺(びくん)を帯びる〉とか〈河岸を変える〉という

好きな表現が出てくるのですが、

現在でも、飲食する店を変えるときに「河岸を変えようか」という表現を

実際に使っている方がいて驚きました。

標題の『グッド・バイ』以外にも『男女同権』や『訪ね人』『饗応婦人』など

傑作が多く、取り扱った作品が多かったためバタバタしてしまいましたが、

対話の中身の濃い充実した時間を過ごせました。

 

今回も参加者でもある坂本長平商店 長寿味噌の坂本さんに

すてきな写真を撮っていただきました。ありがとうございました。

 

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今回作品をヒントにしたむすびのさんからのお食事は、

日本の戦前からある素朴な食である玄米のおにぎりや野菜たっぷりのスープ、

太宰の出身津軽のりんごジュース、銀座の明治からある文豪に愛された

カフェーパウリスタのブラジルコーヒーなど趣向を凝らした美味しい料理が

今回も提供されました。 ありがとうございました。

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相変わらず参加者Mさんの事前研究がすごい。。

でも他のみなさま、ここまで調べなくても大丈夫ですので、

軽い気持ち参加してください−。

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最後にみなさんで記念撮影です。ありがとうございました!

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【開催案内】第四回 別府鉄輪朝読書ノ会

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被災・疎開の極限状況から敗戦という未曽有の経験の中で、我が身を燃焼させつつ書きのこした後期作品16編。太宰最後の境地をかいま見させる未完の絶筆「グッド・バイ」をはじめ、時代の転換に触発された痛切なる告白「苦悩の年鑑」「十五年間」、戦前戦中と毫も変らない戦後の現実、どうにもならぬ日本人への絶望を吐露した2戯曲「冬の花火」「春の枯葉」ほか「饗応夫人」「眉山」など。  (「BOOK」データベースより)

 

7月24日(日)の第四回目となる別府鉄輪朝読書ノ会では、

太宰治の絶筆『グッド・バイ』を採り上げます。

また新潮文庫に収められている他の短編も課題図書の範囲とします。

 

わたしは学生時代から10年ちょっと三鷹に住んでいた時期がありまして、

すぐ近所には太宰が入水自殺をした玉川上水やお墓のある禅林寺があり、

文学好きな友人が上京してくればそこをいつも案内していましたが、

わたし自身はと言えば、中学や高校のときにいくつか代表作を読んでいた程度で、

それほど太宰の熱心の読者ではありませんでした。

むしろ太宰に関してはあまりいい印象をもっていなかったとさえ言えるのですが、

あるとき青空文庫で『女生徒』を読む機会があり、

その女生徒が乗り移ったとしか思えない言葉のつらなりにかなりの衝撃を受けて

太宰に対する認識を全面的に改めたのでありました。

太宰治 女生徒

 

端的に言うと、わたしは「ふざけた」人が大好きなのです。

ふざけることしかできないというのか、彼の言う道化とも少し違うのですが、

この世界がどうしても一つの巨大な冗談に見えてしまう、

その世界観に共感したのでした。

ということで、それが最も極まっていると思われる『グッド・バイ』を

七月は採り上げてみることにします。

 

 

 

【開催報告】第三回 別府鉄輪朝読書ノ会

先日、第三回目の別府鉄輪朝読書ノ会を開催しました。

当日は朝から激しく雨が降っていましたが、

開催する頃には止んでくれました!

 

今回の課題図書は角田光代さんの『対岸の彼女』。

最初に全体的な感想を全員に聞いたところ、

初めはのれなかったけど、読んでいくうちにはまっていって

最後には号泣したという方がいたり、

10年前に読んでそのときは高校生の葵に共感していたが、

今は自分が働いているので小夜子に共感ができる年齢になったとか、

男性にこの女性だけの世界観が分かるの?とか

身につまされる、男がいない世界、女子校の濃密な時間がうまく書かれている、

わかりやすく書かれすぎているのでは?など様々な感想が聞けました。

 

女性の参加者からは女子校とは違うママ友関係の複雑さが聞けたり、

女の派閥なるものがそもそも感知できないという話や、

独りぼっちを避ける傾向や明るさを強制する社会の有り様であったり、

女性が家庭に入ることで社会と切り離されてしまう怖さが語られたりと、

この小説をきっかけに今の女性が置かれている様々な状況が鮮明になって、

男の私としてはとても勉強になった会でした。

女性の人間関係はいろいろと面倒くさいけど、

だめになったら別に新たに構築し直す力があるからいいんだという

前向きな話が聞けて、女性の強さを改めて思い知りました。

 

私がこの本を選んだ理由を聞かれましたが、

タイトルがまず抜群に素晴らしく読む前から傑作の予感がしたことと、

実際に読んで中身も面白く身近なテーマだったので、

語ると盛り上がる小説だと判断したためです。

 

今回も坂本さんより開催風景を撮影していただき、

ステキな写真を送っていただきました。ありがとうございました。

次回は太宰治の絶筆『グッド・バイ』です。お楽しみに!

 

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いつもむすびのさんの軽食メニューは、

とりあげる小説に関連付けたものにしていただいているのですが、

今回は悩みに悩んで、「対岸」をキーワードに大分の対岸である愛媛の食材を

ふんだんに使ったメニューを提供していただきました。

たいへん美味しかったです。ありがとうございました。

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最後に全員で記念撮影。

わざわざ北九州から参加された方も!ありがとうございました。

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紙の手触り・ひらがな・活版印刷

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先日、大分銀行宗麟館2階にて紙好きの集まる

カミカイギというのがありまして行ってきました。

紙が好き!カミカイギ、開催中です! – パラボラ舎

 

手動の活版印刷機で便箋を制作するワークショップがあり、

鉄輪朝読書ノ会のレターセットをつくってみました。

罫線を引くところから始まり、

ひらがなですがピンセットで「活字を拾う」行為をし、

文字を組み、インクをつけて印字しました。

他にも(株)竹尾さんの目も眩むような紙サンプルがたくさん展示してあり、

見て触って作って楽しむイベントでした。

 

電子書籍を否定するものではないですが、

私の場合、読書と手に持ったときの紙の手触りとが

分かちがたく結びついています。

それでも電子と紙というのは対立するものではなく、

お互いの良さを引き立て合えればいいと思っています。

そんな発見がこのイベントにはたくさんありました。

企画されたパラボラ舎の田中さんには帰り際、紙サンプルをいただきました。

ありがとうございました。