対話と人と読書|哲学カフェ大分

大分市で哲学カフェ大分を別府市で別府鉄輪朝読書ノ会を開催しています。

人が待ち時間に空を見上げなくなったから、UFOの目撃情報が減った

 

 

 

 

私は「青く高い空」の章では、人が戦場でたおれるとき青い空を恋しがり、あそこに幸福があったと思うということについて話した。


小島信夫『私の作家遍歴』

 

 

 

 

 

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2002.10   Seoul



 

 

一週間

 

 

月曜日

ウカリユハウスの壁面の塗装が大方終わる。思ったより白く輝いていて気恥ずかしささえある。新品の靴をおろしたときのような。

 

父が西南戦争の歴史が好きなので、なぜか部屋を片付けていると出てきた西南戦争激戦地図をプレゼントする。鶴崎にも薩摩軍は来ていたんだな。

 

 

火曜日

大分・別府も梅雨が明けた。

 

 

最近は素麺ばかり食べていたので、滋養をつけるためにスパイスカレーを作った。良い出来映え。カレー鍋ではなく、フライパンで作るのがコツだと気付いた。それにしてもスパイスの匂いが近所中に漂う。スパイスカレーを食べるととても元気が出る。それも上っ面な元気ではない。ここ最近やる気に欠けていたところ、奮起するものがある。

 

 

 

水曜日

戸次の帆足本家というところで塗師赤木明登さんの個展があるとSNSで偶然知り、駆けつける。もう十年以上前になるが、輪島に訪れたとき、そのお椀を手に取った感動そのままに、彼の仕事はそのままゆるやかに進化し、一万年以上続く漆塗りの歴史をしずかにそして忍耐強く引き受けているように思えた。「能登一ノ椀」と名付けられた黒いお椀の光をやさしく吸い込む艶、文字通り漆黒の、得も言われぬぽってりとした丸み。ため息が出るほど美しい。オーナーの帆足さんからは「癒し」という言葉が出て、コロナ渦のなかで売れているようだ。

 

 

 

 

僕の自慢はオリジナリティが無いことだと考えています。

 

赤木明登

 

 

 

 

夜、武田砂鉄氏×ブレイディみかこ氏による、それぞれの刊行記念オンライン対談を聴く。大運動会(オリンピック)やフェミニズム、マチズモについての話。英国にはぶつかり男はいないという話。男の歪んだ自尊心について、哲学対話でも話せそう。

 

 

 

木曜日

朝の数時間、微かな涼風が漂うように吹くのを楽しむ。鬼太郎の親父が毎朝草表に転がる朝露を甘露として味わうように。

 

 

走っている途中で大雨が降ってきた。中間地点だったので戻ることはせず、そのまま走った。それはそれで気持ちよかった。 久しぶりにずぶ濡れ、洪水のように人間の道は流れていき、蛙たちの道ができてぴょんぴょん跳ねていた。遠雷だけが怖かった。

 

 

プルースト失われた時を求めて』(井上究一郎訳)を読み始める。百合のような薄い香りがする。たしかな焦点を結ばない散文の極地。夏葉社の島田さんは無職時代に全巻読んだそうだ。自分も今をおいて読まなければ、あと老後にしか読む機会はないんじゃないのかと思った。

 

 

 

金曜日 

今日はとても涼しい。扇風機もいらない。

 

ベランダ側を工事しているので、奥の部屋に移動して読書する。この部屋の窓から見える冨士屋さんの庭の樹々がとても気に入っていて、ぼうっとしたいときはここに置いてある椅子に座って眺める。樹々の花々に飛び交う虫たちに順番があるのか、季節や気候、時間帯によって違うのがわかる。こういうのはぼうっとした時間のなかでしか気付けない。

 

 

夜、高橋源一郎氏のラジオを聴く。この番組冒頭の高橋源一郎氏のモノローグに、いつもなぜだか胸がぎゅっとなる。労働していた頃、カーラジオからその声が流れ、幾度か胸に迫るものあり、涙を流すこともあった。過酷な労働のなかで擦り切れた理想を慰める数少ない人文学との繋がりが感じられる時間だった。

 

 

土曜日

朝から激しい雨。

 

 

実家に一時帰る。

 

夜、オンラインで海老名中央図書館の企画「『波〔新訳版〕』刊行記念イベント 「ヴァージニア・ウルフとの新たな出会いとその先」」森山恵氏(詩人・翻訳家)×小澤みゆき氏(編集者)の対談。ヴァージニア・ウルフの『波』は以前既訳のもので読んだのだが、途中で挫折してしまって、ずっと気になっていたのだった。「かわいいウルフ」「男たち女たちが薄くなる瞬間」「彼女ののりものに乗って新しい体験をする」「アダプテーション」「以前の翻訳は読まずに翻訳する。影響を受けるので」など示唆に富む内容だった。図書館が企画したというのも素晴らしい。司書さんのファシリテーションも良かった。小澤さんのzoomの画面がアニメーションになっていて、あれどうやってやるんだろうとおもった。

 

 

前述のオンラインをヘッドフォンで聴きながら、同時にサッカー日本代表のスペインとの試合を音を消してテレビで観戦する。実況がないほうがいい。現象だけが見える。堂安選手のゴール。それにしても本番が無観客というのはどうにかならないものか。ほんとに誰のため何のためにオリンピックを開催するのだろうか。。

 

 

そんなことを並行しながら、大きな地震がきた。初めは緩く、徐々に強くなった揺れ。揺れている最中の、この揺れがこれから大きくなるのか小さくなっていくのかわからないあの感じが不気味だが、どうしようもない。

 

 

小澤みゆき氏の試み

authors-note.stores.jp

 

 

 

日曜日

朝、オンラインで「本読みに与ふる時間」を開催する。 厳かな、と呼びたくなるような黙読の時間を参加者の方と共有する。わたしは図書館で借りて来週返さねばならない藤原辰史の『ナチス・ドイツ有機農業』を読んだ。会の時間が終わっても、読書モードは続きしばらく読み耽る。いい日曜日のスタート。

 

 

コンビニで見かけるとつい買ってしまう「&プレミアム」という雑誌。今回のテーマは「心地よく暮らすための、日々の習慣」。各氏いろんな人の習慣が紹介されている。そんなに有名でない人が多く占められているのが良い。どの習慣もありふれたものなのも良い。同じ喫茶店の決まった席で紅茶を飲むというのがあって、「決まった席」というものを自分も持ってみたいとふとおもった。 

 

 

 

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窓辺