陸から海へぬける風を
陸軟風とよぶとき
それは約束であって
もはや言葉ではない
だが 樹をながれ
砂をわたるもののけはいが
汀に到って
憎悪の記憶をこえるなら
もはや風とよんでも
それはいいだろう
盗賊のみが処理する空間を
一団となってかけぬける
しろくかがやく
あしうらのようなものを
望郷とよんでも
それはいいだろう
しろくかがやく
怒りのようなものを
望郷とよんでも
それはいいだろう
〈陸軟風〉石原吉郎
夏の盛り。
台風と問答無用の暑さ
本を読む
今週末2日続きでの哲学対話の準備をする
いくらでも時間を注げる
世界を創造する
アレントの「人間はそれ自らが始まりである」の言葉。
母屋を片付ける
片付けは命懸けだった
捨てられない性格のため高校時代のプリントなど出てきて
何度も手を止め読み耽ってしまう
友人の死を告げた学年主任のことばが、ワープロなどまだ流行っていない時代で
手書きで荒々しく書かれていた
霊も年をとる
人は死において、ひとりひとりその名を呼ばれなければならないものなのだ
この時期の戦時中の映像をNHKなどでよくみるにつけ、
落下する特攻機、特攻機の特攻隊が特攻して焔につつまれ散っていくのをみるにつけ、
これはおれだった、これはおれだったとおもう
海に散華するのではなく敵艦に当たればよろこぶ自分もいる
僕らがひとつの意思をもって、ひとつの悲しみをはげしく悲しむとき、悲しみは僕に不思議なよろこびを与える。人生とはそうでなくてはならないものだ。