対話と人と読書|別府フリースクールうかりゆハウス

別府市鉄輪でフリースクールを運営しています。また「こども哲学の時間」など

【開催報告】第七十四回 別府鉄輪朝読書ノ会

 

 

 

 

残された熱気とともに夜へむかい、ゆっくりと沈んでいこうとしている夏の夕刻は、いろんなものがこんなにはっきり見えるのに、いろんなものがあいまいだ。懐かしさとか優しさとか、もう取り返しがつかないことやものたちで満ちていて、そんなもやのなかを歩いていると、おまえはこのまま進むのか、それとも引き返すのかを問われているような、そんな気がしてしまう。

 

 

 

 

「生まれてきたことを肯定したら、わたしはもう一日も、生きてはいけないから」

 

 

 

「忘れるよりも、間違うことを選ぼうと思います」

 

 

 

『夏物語』川上未映子

 

 

 

 

 

 

 

七月の別府鉄輪朝読書ノ会を開催しました。

 

今回は今の季節ともからめつつ、川上未映子さんの『夏物語』を選びました。

はじめにみなさんに自己紹介をしていただきながら、

全体的な感想を聞いていきました。

 

・過激な発言も大阪弁だとゆるせる

・自分の問題として読んだ

・男性がどう読んだのか

・自分が知っていることをこんな風な表現をするんだと驚かされた

・親になることってどういうことなのか知りたくて読んだ

大阪弁のエピソードがいい

・朝7時頃までかかって読んだが、泣きっぱなしだった

・私が産む前に読まなくてよかったかも

・ひさしぶりの小説。文体やリズムに惹かれた。この本を紹介してくれてありがたい。

 

 

反出生主義という考え方(出産行為は子どもへの暴力、親のエゴ)があって、

それに半分は納得しつつも、半分はそうではない自分がいて、それが何なのか

理由はわからないが、まだ見ぬ子どもに会いたい、間違ってもいいと出産を決意し

身を以て体現する夏子。

同じく惹かれ合う逢沢氏は、まだ見ぬ父親に会いたいと思っている。(逢沢の「逢」)

ベクトルが真逆だが、イデアの状態である人に会いたいと思う気持ちは、

充分自分勝手でありつつも尊いことのようにも思えました。

 

 

善百合子の思想(反出生主義)は手強い。相当に手強い。

参加者の方が話していたように、この名前の由来は「正しさ」にあるのだろう。

 

でも「間違い」を引き受けても生を肯定したいし、

また他の参加者の発言にもあったように、

深く考えずに生きることもまた肯定されていいと考え、勇気を得ました。

 

 

むすびのさんのこの日のドリンクはバナナジュースでした。

バナナは木ではなく多年草の草で、同じ株から数代にわたって果実をなすところから、

着想を得たとのことです!

 

むすびの河野さんより特製メニューの説明です。

 

 

人工授精が主な鮭のホイル焼き。固定種に着目して、日本南瓜などを素材に選んでくれました!

 

 

 

感想を語り交わしていく中で、「貧困であってもお金持ちでも孤立しないこと」

という意見がありました。

 

この読書会や哲学カフェ、自分がしている別府フリースクールうかりゆハウスの活動も

そういった社会的な孤立からのなんらセーフティネットになればいいと考えているので

夏目夏子さんのいるポジションについても考えさせられました。

 

 

ご参加ありがとうございました。

 

 

次回八月は戦争文学『生きている兵隊』石川達三を読みます。