世界から身を退くことは個人には害になるとは限りません.…しかし一人撤退するごとに、世界にとっては、ほとんどこれだと証明できるほどの損失が生じます。失われるものとは、この個人とその同輩者たちとの間に形成されえたはずの、特定の、通常は代替不可能な〈間〉in-betweenなのです.
『暗い時代の人々』ハンナ・アーレント
この旅の目的の一番は伊万里市民図書館を訪問することだった。
図書館司書の資格をとったときに何度も先進事例としてあげられるこの図書館。
行政と市民が一緒になって建設や運用について考え実行した図書館の事例として、
全国から視察があり、もっと言うと全国にファンがいる図書館である。
前日訪れた武雄市のTSUTAYA図書館の首長が推進した図書館とは、
在り方が根本において違う。
私は今回初めて訪れて驚愕したし、感動もした。ファンになった。
人を一人も取り残さないとは、ここまでしないと言えないと思った。
でもしていることは地道で地味な積み重ねだ。
TSUTAYA図書館のようなきらびやかさはない。
でもここにはアーレントが言うような応答する公共空間が確かに具現化されていて、
胸が熱くなったのだった。
特別に許可をいただいて、撮影させていただいた。
ありがとうございました。
利用者、市民の声が反映しやすい仕掛けがたくさんあった。
POPによるコミュニケーションの量と質に圧倒される。仕事じゃない。真似でもない。
本物の愛情と情熱がなければできないし、伝わらない。
壁面のいろんな場所に宣言やスローガン、鼓舞する言葉が並ぶも、押しつけがましくなく、対等な目線を感じる
対話的な態度を表明する館長
プレートはすべて伊万里焼の群青で
市民からの、図書館とは、公共空間とはなにかの問いへの応答がすべてここにあるのだった。